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2012 年度 実績報告書

翻訳後修飾によるシグナル伝達制御とその破綻に起因する疾患の数理モデル

計画研究

研究領域翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻
研究課題/領域番号 22117008
研究機関東京大学

研究代表者

市川 一寿  東京大学, 医科学研究所, 特任教授 (20343626)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2015-03-31
キーワード細胞シミュレーション / NF-kB / 核移行 / 振動 / ストレス顆粒 / 反応拡散
研究実績の概要

H24年度は1)A-Cellの機能拡張を行うこと、2)3次元球形細胞モデルにおける核内のNF-kB量の振動を現実的なモデルに拡張し、空間パラメータが与える影響の検討と解析を行うこと、3)ストレス顆粒(SG)のモデルを改良してSG消滅におけるダイナミクスも実験と一致するようにすること、およびそのモデルの解析を主な目的として実施した。
1)については、フラックス解析機能と細胞内構造(核とER)の構築・シミュレーションが可能なようにA-Cellを拡張した。またプラットフォーム非依存性を増大させるためにQt化について検討し、可能であるとの結論を得た。一方領域内若手研究者向けにA-Cellの講義と講習会を行い、かつホームページにA-Cellを用いたモデル構築の解説を公開した。
2)については、3次元球形細胞における空間的パラメータ(N/C比、mRNAとタンパク質の拡散係数、核膜輸送の大きさ(核膜孔の数)、タンパク質の翻訳場所の4つ)が振動に与える影響を詳細に調べて論文として発表した。またこれら4つの空間パラメータのうち拡散定数に注目し、なぜ振動に影響を与えるのかについて調べた。その結果NF-kBの抑制因子IkBの拡散定数が重要であることを見出し、その理由として、IkBの拡散定数が大きい時には核から遠く離れた部位にIkBを運ぶことができ、ここにIkBを貯蔵することが可能となるため、それを再び抑制因子として利用する、というサイクルが成立するためであることを明らかにした。
3)についてはモデルのパラメータ依存性を調べた。その結果、SG消滅のダイナミクスを制御するパラメータを見出し、実験と合致するシミュレーション結果を得ることに成功した。なおかつ、モデルのパラメータ依存性を詳細に調べ、自己凝集タンパク質であるTIA-1の濃度がSG形成に大きな影響を与えることを新たに見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

A-Cellの機能拡張を予定通り完了した。さらに若手研究者へのA-Cell講義と講習会の実施、またホームページ上にA-Cellを用いたモデル構築の解説を行うと同時にモデルのダウンロードも可能にした。NF-kBの振動のメカニズム解析については、拡散定数が影響する原因を明らかにした。拡散定数が大きくなると空間的均一性が増大すると考えるのが通常であるが、我々の解析結果はその常識を覆し、拡散定数が大きい方が空間的非均一性を生む場合があることを明らかにした点で新しい。次にSGのモデルに関しては、その性質の調査を終了し、かつTIA-1の濃度がSG形成に大きな影響を与えるというこれまで知られていなかった知見を見出すことに成功した。以上より、研究はおおむね順調であると言える。

今後の研究の推進方策

A-Cellの更なる改良と普及を進める。NF-kBについては古典的経路だけではなく、非古典的経路への拡張を行う。この時、両経路のクロストークについて考慮すると同時に、メカニズムの予言も行う。SGについては、SG形成場所、SGの大きさとその時間変化について実験と比較し、新たな予言につなげる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Control and Inhibition Analysis of Complex Formation Processes2012

    • 著者名/発表者名
      Saitou,T., Itano, K., Hoshino, D., Koshikawa, N., Seiki, M., Ichikawa, K., (Suzuki, T.)
    • 雑誌名

      Theoretical Biology and Medical Modeling

      巻: 9 ページ: 33

    • DOI

      10.1186/1742-4682-9-33

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Roles of Spatial Parameters on the Oscillation of Nuclear NF-kB: Computer Simulations of a 3D Spherical Cell2012

    • 著者名/発表者名
      Ohshima, D., Inoue, J., (Ichikawa, K.)
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 7 ページ: e46911

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0046911

    • 査読あり
  • [学会発表] Computational simulation revealed critical spatial parameters that change oscillation pattern of nuclear NF-kB2013

    • 著者名/発表者名
      Kazuhisa Ichikawa
    • 学会等名
      1st International Symposium on Protein Modifications in Pathogenic Dysregulation of Signaling
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2013-02-01 – 2013-02-01
    • 招待講演
  • [学会発表] 浸潤突起へのMT1-MMP輸送によるECM分解促進のシミュレーションモデルとその解析2012

    • 著者名/発表者名
      渡部綾子、(市川一寿)
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2012-12-13 – 2012-12-13
  • [学会発表] 細胞内空間パラメータは転写因子NF-kBの核内振動を制御する:3Dシミュレーションによる解析2012

    • 著者名/発表者名
      大島大輔、井上純一郎、(市川一寿)
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2012-12-13 – 2012-12-13
  • [学会発表] MT1-MMP and the dynamics of invadopodia for ECM degradation2012

    • 著者名/発表者名
      市川一寿
    • 学会等名
      MT1-MMPシンポジウム
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2012-11-30 – 2012-11-30
    • 招待講演
  • [学会発表] ストレス顆粒の形成・維持・消滅の力学2012

    • 著者名/発表者名
      市川一寿
    • 学会等名
      応用数理学会2012年度年会
    • 発表場所
      稚内
    • 年月日
      2012-08-30 – 2012-08-30
    • 招待講演
  • [学会発表] 転写因子NF-kB振動の数理モデル2012

    • 著者名/発表者名
      大島大輔、井上純一郎、(市川一寿)
    • 学会等名
      応用数理学会2012年度年会
    • 発表場所
      稚内
    • 年月日
      2012-08-30 – 2012-08-30
    • 招待講演
  • [備考] 東京大学医科学研究所腫瘍数理分野ホームページ

    • URL

      http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/mathcancer/index.html

  • [備考] 新学術領域「修飾シグナル病」ホームページ

    • URL

      http://shushoku-signal.com/

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公開日: 2018-02-02  

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