研究領域 | 多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
22118003
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
中西 真 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40217774)
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研究分担者 |
横山 明彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10506710)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | ゲノム / シグナル伝達 / 発現抑制 / 発生・分化 |
研究概要 |
DNAメチル化は細胞形質を決定する重要なエピジェネティック修飾で、通常の細胞分裂においては正確にメチル化パターンが維持されるが、細胞分化刺激によりメチル化パターンが変化する。中西は、通常の細胞分裂におけるDNAメチル化パターンの維持に、Uhrf1によるヒストンH3リジン23のユビキチン化が重要な役割を果たしている事を明らかにした。Uhrf1分子のRINGフィンガードメイン変異体をノックインした細胞では、DNA維持メチル化に異常が生じ、ES細胞においてDNAメチル化程度が著名に減少した。このDNAメチル化減少はDnmt1分子がDNA複製部位に局在できない事による事も分かった。以上から、細胞が形質を維持するためのDNA維持メチル化機構の分子基盤が理解されたと考えられた(中西)。 造血幹細胞における幹細胞性は、ヒストンメチル化酵素であるMLLが標的遺伝子の転写を活性化する事で維持される。研究分担者の横山は詳細な構造機能解析により、MLL fusionがエピジェネティックマーカーである非メチル化CpGやH3K36のメチル化を認識して標的プロモーターを識別して転写を活性化する事を見いだし、学術誌に発表した。この実験系を利用して、野生型のMLLがCBPなどのヒストンアセチル化酵素をリクルートする事で転写を再活性化する事を見いだした.(横山)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Uhrf1によるヒストンH3リジン23のユビキチン化機構については研究が進捗した。また、当該部位の脱ユビキチン化酵素も同定され、DNA維持メチル化と受動的DNA脱メチル化との間におけるスイッチ制御に対する分子基盤の一端が明らかになった。これにより、細胞分化に普遍的に存在する分子機構解明に向けて有力な作業仮説の検証が可能となった(中西)。 MLLが造血幹細胞の幹細胞性を維持する仕組みを探る上で、MLL依存性の転写活性化が重要である事がわかっていたが、その分子メカニズムは不明な点が多かった。研究分担者の横山は詳細な構造機能解析により、MLLが標的遺伝子を認識するメカニズムを明らかにした。(横山)
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今後の研究の推進方策 |
現在、ヒストンH3リジン23ユビキチン化認識特異モノクロナール抗体を作成中であり、完成後には当該部位のアセチル化抗体、メチル化抗体と併せて、分化関連遺伝子プロモーターにおけるDNAメチル化変動と、リジン23修飾変動のゲノムワイドな解析が可能となる。これにより、細胞分化の普遍的制御機構についての理解が深まるものと考えられる(中西)。 分化の進行に伴って起こるエピゲノムの変化を調べる研究は実験条件の最適化が難航し、思うような結果が得られていない。その一方で構造機能解析による知見から、MLLが標的遺伝子を認識して転写を活性化し、その結果として幹細胞性を維持するメカニズムは明らかになって来た。今後はより良い分化モデルとなる実験系を模索しつつ、現在うまくいっている構造機能解析を押し進めて更に詳細な分子メカニズムの解明に挑む。(横山)
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