計画研究
本研究は、多能前駆細胞からT前駆細胞への分化能限定過程すなわち、M-T-B前駆細胞から順次M-T前駆細胞、T前駆細胞になるという段階的分化能喪失過程の分子機構を解明する事を目標としている。主に用いる方法は、試験管内で特定の分化段階で任意に分化を停止させたり再開させたりする手法である。具体的には、転写因子E2AあるいはEBF1の機能阻害と、ノッチシグナルとIL-7シグナルの持続的付与により、それぞれM-T-BおよびM-T段階で分化を強制停止させる方法を用いた。期間中の研究で、EBF1欠損多能前駆細胞からT細胞系列へ誘導する系を用いて、15のタイムポイントについての分化誘導細胞のサンプルを作製し、理研のFANTOM5というプロジェクトに提供した。その結果は、他の細胞種を用いた経時サンプルとともに2014年度に発表された(Arner E et al. Science, 347: 1010, 2015)。さらに、これらの方法を用いて得られた分化再開細胞のゲノムワイドな遺伝子発現解析データにバイオインフォマティクス解析を加え、M-T-BからM-T前駆細胞への誘導に働く転写因子の遺伝子発現ネットワーク構造を描出した。これらの結果は申請者が責任者となる論文として現在作製中である。また、本研究期間中に、T前駆細胞においてポリコムを欠失させるとT細胞の分化が著明に障害される事と、T系列からB系列へ分化転換することを見いだした。さらに25年度にはPAX5がその責任遺伝子であることも見いだし、この現象の分子機構に切り込むことができた。これはT細胞初期分化過程におけるエピジェネティックな遺伝子制御の重要性を示す重要な成果で、現在投稿中である。このように、研究は計画通りに進み、当初の目的は達成したと考えている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
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