エピゲノム制御異常が、造血前駆細胞の分化を混乱させ、骨髄異形成症候群(MDS)などの疾患発症へとつながるメカニズムを解明していく研究の初年度として、以下のような研究を実施した。なお、遺伝子名の変更を行った(Kasumi→eff-1、Titan→eff-2)。 1.ヒストン脱メチル化酵素Fbxl10の過剰発現がMDSを発症させるメカニズムを検討するため、Fbxl10欠失マウスとFbxl10過剰発現マウスを作製し、解析を進めた。また、このマウスとeff-2欠損マウスのかけ合わせに着手するとともに、レトロウイルスを用いて造血幹細胞にFbxl10を過剰発現させ、骨髄移植をおこない、Fbxl10過剰発現とEff-2の欠損が協調的に働いてMDSを発症させることを見いだした。 2、Eff-1やeff-2が、アクチンリモデリングを制御し、遊走方向や細胞極性決定を制御する分子メカニズムを解析した。Eff-1/eff-2と結合するアクチン・ゲルソリンファミリー複合体の構成メンバーを質量分析機を分析した。エンドソームに局在するいくつかのタンパク質が同定された。さらに候補タンパク質の同定を進めている。また、Eff-1/eff-2タンパク質がアクチンリモデリング制御で果たす生化学的機能の解析を進めた。 3.片アレル欠失効果(Haploinsufficiency)による発現低下メカニズムを解析する目的で、7q染色体上の遺伝子のプロモータやヒストンの修飾状況を次世代シーケンサを駆使して網羅的に解析した。今年度は特に最初の段階として、7q領域のゲノムDNAを濃縮してDNAメチル化状態を解析するパイロットスタディを細胞株より抽出したDNAを用いて行い、実験系を確立した。
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