計画研究
正常造血細胞の分化メカニズムを、造血細胞の分化コースを逸脱した骨髄異形成症候群(MDS)の分化異常の分子メカニズムを解明することにより解明する。また、次世代シーケンサを用いたエピゲノム解析技術を確立して、細胞分化に関わるエピゲノム制御変化を「ビッグデータ」として捕捉し、解析サービスを北村班内外の、造血研究以外を含んだ広い範囲の研究者に提供し、細胞分化の統合的理解を進める、の二点が本計画研究班の目的である。このため、以下の三本柱の研究を進めてきた。(1)MDSに特徴的な7q-の4責任遺伝子候補のうち、SAMD9/SAMD9Lの機能と細胞運命決定。(2)エピゲノム制御の正常/異常(MDS)造血細胞分化への関与。(3)片アレル欠失効果メカニズムの解明。平成25年度までの研究経過は当初計画の枠内で行われた。 (1)に関してはSAMD9/SAMD9Lがエンドソームに局在して、その融合を促進し、リガンド結合性のサイトカイン受容体の代謝に関与していること、同時にRhoを介するアクチンリモデリングの制御を通じて、細胞の遊走や極性に関与する。このふたつのシグナルのクロスする場所で、SAMD9/SAMD9Lが機能することを解明した。これらのデータは平成25年度に、Cancer Cell誌に掲載された。(2)では、脱メチル化剤によるMDS芽球の赤血球系への分化メカニズムの解明を、白血病細胞株を用いた実験系で推進した。この過程で、次世代シーケンサを用いた、多くのエピゲノム解析系を確立し、北村班内外の細胞分化の研究者に提供している。(3)では、(2)で確立された手法を用いて、モノソミー7を有する白血病細胞株を解析するとともに、新たな手法であるゲノム編集手技を用いて染色体中間欠失を作製し、iPS細胞の造血細胞分化による実験系を立ち上げるべく準備を開始した。
2: おおむね順調に進展している
マウスの実験は、異なる遺伝子改変マウスの掛け合わせによる表現型の観察で、腫瘍発症までに1年半から2年程度かかるため、時間を要するが、順調に進んでいる。次世代シーケンサによる大量ゲノム・エピゲノム解析も順調にデータを蓄積している。ゲノム編集など新しい試みを開始した。高いIFを持つ雑誌に論文が掲載された。
順調なデータの蓄積が見られているため、計画通りに推進させる。ゲノム編集など新しいテクニックを積極的に導入し、最先端の研究を行なう。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件)
PLOS ONE
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