研究領域 | 多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
22118007
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
池田 恭治 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 運動器疾患研究部, 部長 (00222878)
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キーワード | 破骨細胞 / 分化 / 栄養 / エネルギー |
研究概要 |
骨髄の血液細胞から多核の破骨細胞に分化する過程において、骨髄環境から供給されるM-CSFとRANKLは必須のサイトカインである。一方、それぞれの受容体であるc-fmsとRANKが活性化されても、グルコースとグルタミンの供給がないと破骨細胞の形成や骨吸収機能は阻害されることが判明した。分化の進行に伴って解糖系およびミトコンドリアのTCAサイクルと呼吸機能が段階的に活性化される。グルタミンの輸送体であるSlc1a5の発現は分化初期に上昇し、これをノックダウンすると破骨細胞の分化は著明に阻害された。一方、グルコースの輸送体であるGlut1の発現は成熟破骨細胞になるときに急激に上昇し、主として破骨細胞の骨吸収機能に寄与していた。グルタミン輸送体や解糖系の酵素の発現は、同じマクロファージが樹状細胞へ分化する際には減少したことから、破骨細胞への分化特異的と考えられた。HIF-1αのノックダウンは分化に影響しなかったが、c-mycの転写機能を阻害するとグルタミン輸送体の発現の減少とともに破骨細胞の分化および成熟破骨細胞による骨吸収機能が用量依存性に抑制された。mTORは核周囲のlysosomeと思われる構造体に局在しているが、骨吸収時には局在が変化した。Rapamycinは分化のみ抑制したが、Torin1は破骨細胞の分化も骨吸収機能も強力に抑制した。以上から、グルタミンなどの栄養因子は、mTORを介して破骨細胞の分化と機能に影響を及ぼしている可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子発現解析の結果をもとに、破骨細胞分化に特徴的な細胞内エネルギー代謝の変化についての知見とそれに関与する転写因子をほぼ絞り込むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
破骨細胞分化における代謝コントロールについてはかなり詳細な知見が集積できたので論文化を急ぐととともに、分化に伴う代謝適応の転写ネットワーク、とりわけヒストン修飾などのepigenetics制御へと徐々に重点を移していきたい。
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