計画研究
骨髄マクロファージが多核の巨大破骨細胞に分化する各段階において、細胞内の糖・脂質・アミノ酸・核酸代謝、細胞周期、アポトーシス、エピゲノムに関わる遺伝子の発現変動を詳細に解析し、なかでも解糖系酵素群とグルタミン輸送体・代謝酵素の発現上昇に注目した。実際、分化とともに糖消費と乳酸産生が進み、糖欠乏は成熟破骨細胞による骨吸収機能を阻害した。Hif1aをノックダウンすると、解糖系酵素群の発現低下とともに骨吸収機能が抑制されたことから、Hif1aが上記の代謝適応に関わっていることが示唆された。グルタミンの欠乏は破骨細胞分化を著明に抑制した。グルタミン輸送体のSlc1a5のノックダウンあるいは薬理的阻害は分化のみならず吸収機能を著明に抑制した。c-Mycの発現を小分子化合物JQ1によって阻害すると、Slc1a5やグルタミン代謝酵素の発現低下とともに、破骨細胞の分化と機能は用量依存的に抑制されたことから、グルタミンの取り込みと代謝は主にc-Mycが制御していることが示唆された。Torin1によるmTOR活性の阻害は、破骨細胞の分化と機能を著名に阻害し、mTOR遺伝子あるいはraptor遺伝子の欠失は分化をほぼ同程度に抑制したことから、主としてraptorを含むmTORC1が破骨細胞の分化に関わっていると考えられた。一方、AMPKの活性化は分化を抑制した。近年、癌細胞において好気的解糖(Warburg効果)やグルタミン代謝と増殖の関連が注目されているが、postmitoticで多核の破骨細胞ではTCAサイクルと酸化的リン酸化に加えて、グルコース・グルタミン代謝も亢進していることが判明した。破骨細胞の分化や機能と密接に関わるエネルギー代謝の視点は、代謝性骨疾患の病態理解や薬物治療へのヒントを与える可能性がある。
3: やや遅れている
論文発表が当初予定よりやや遅れたが無事アクセプトされた。
破骨細胞分化に伴う代謝適応とそのメカニズムについては大枠を明らかにすることができたので、25年度以降は細胞周期、アポトーシスや転写制御機構に関する解析を重点的に推進し、これらと細胞内代謝との関連についてさらに深く解析を進めていきたい。また沢野・宮脇らが開発したfucciを導入した骨髄細胞が成熟破骨細胞になる過程を10分ごとに100時間あまり画像追跡することにより、個々の細胞レベルでの核の動態や細胞融合の詳細な解析を進めており、分化に伴うゲノム・エピゲノムの変化との関わりを調べていく予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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