研究実績の概要 |
Fucciリポーターを発現する骨髄細胞から破骨細胞への分化過程における細胞周期ダイナミクスと呼応して、分化前半の2日間にBrdUの取り込み増加と、生細胞数の24時間ごとの倍加が認められた。この分化前半の増殖期にはRANKLは増殖を高める方向に働き、分化後半には逆に増殖を抑制する働きがあることが判明した。分化前半の細胞増殖の、終末分化に果たす役割をDNA合成阻害薬のHUを用いて調べたところ、前半のみHUで処理しただけで破骨細胞形成は著明に抑制されたが、同じくHUで処理した細胞の数を増やしてまくだけで後半での分化が回復したことから、DNA合成そのものが破骨細胞に必須なのではなく、結果としての細胞数の確保が重要であると結論づけた。最初にまく骨髄マクロファージの数についても、5,000個/96穴が4日間の破骨形成には最適密度であるが、それ以上細胞数を増やすと3日目の早期に破骨細胞が形成され、4日目にはすでに多くの細胞が死滅していることが観察された。この際、24時間ごとに遺伝子発現を調べると、細胞数が増加しても分化に必要な転写因子や分化マーカー遺伝子の発現上昇は認められず、個々の細胞はほぼ同じくRANKLに反応して遺伝プログラムを発動しており、むしろある閾値以上の細胞密度を確保することにより、細胞同士が接触して細胞融合の機会を増やすなどのstochasticな要因が多核の破骨細胞形成に必要であると結論づけた。 破骨細胞が分泌するタンパク性因子の探索に関しては、分化に伴ってまずPDGF-AAの分泌が高まり、ついでPDGF-ABが、最後にPDGF-BBの分泌が高まることが明らかになった。AAが主に作用する受容体PDGF-Ralphaは間葉系の幹細胞に発現しており、BBが作用するPDGF-Rbetaは血管壁細胞が主に発現していることから、破骨細胞由来のPDGFは、angio-osteogenesis連関で骨形成に寄与していると考えられる。
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