研究領域 | 大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析 |
研究課題/領域番号 |
22119004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
篠崎 和子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30221295)
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研究分担者 |
溝井 順哉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任助教 (20469753)
城所 聡 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (70588368)
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キーワード | 植物 / 環境応答 / 乾燥ストレス / 高温ストレス / 発現制御 / 転写因子 |
研究概要 |
シロイヌナズナのストレス誘導性転写因子DREB2Aは乾燥、高温のいずれのストレス条件下でも安定性が高まり、蓄積量が増加する。DREB2Aの過剰発現やE3リガーゼDRIPの欠損により、DREB2Aタンパク質が過剰に蓄積した植物では、下流遺伝子の誘導が早くなった。そこでDREB2Aタンパク質をプロテアソーム阻害剤処理により蓄積させた状態での下流遺伝子の発現量を調べたが、ストレス処理をしない状態では、下流遺伝子の発現は起きなかった。したがって、DREB2Aの蓄積量は下流遺伝子の誘導性の強さに影響を与える要素である一方、安定化と活性化は別の現象を反映していると考えられた。 DREB2A標的遺伝子は高温や乾燥ストレスに対し、特異的な誘導性を示す。標的遺伝子のプロモーターのデリーションシリーズを作出してその応答性の変化を調べたところ、DREB2Aの認識配列を含む数十塩基対の配列だけでも、ストレス特異的な誘導性を示すことが明らかになった。 DREB2A遺伝子の高温ストレス誘導性は、プロモーター上のHSEによって制御されている。このHSEに結合して活性化する転写因子として、HsfA1転写因子群を同定した。また、HsfA1転写因子群は、DREB2Aのみならず、多くの高温誘導性遺伝子の発現を制御するマスタースイッチとして機能することを明らかにした。一方、DREB2Aの乾燥ストレス誘導性は、プロモーター上のABREおよびCE3様配列によって制御されている。このABREに結合して活性化するする転写因子として、AREB/ABF転写因子群を同定した。また、デリーションシリーズの解析から、非ストレス時にDREB2Aプロモーターの活性を抑制している領域があることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
DREB2A遺伝子の乾燥と高温ストレスによる発現誘導の上流因子の探索においては、前年度に同定したシスエレメントに結合する転写因子の同定を目標としていたが、高温誘導性については、転写因子の同定にとどまらず、転写因子の解析も行った。その結果、同定したHsfA1転写因子は、DREB2Aのみならず多くの高温誘導性遺伝子を制御するマスター転写因子であることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
DREB2Aの活性化機構については、修飾や相互作用因子の存在を念頭に置き、これらの同定に注力する。また、下流遺伝子の特異性決定機構については、デリーションシリーズの解析を引き続き行う。DREB2A遺伝子の乾燥誘導性は、AREB/ABF転写因子の部分的な制御下にあることを明らかにしたので、さらに上流のシグナル伝達系との関係を調べる。また、非ストレス時にDREB2A遺伝子の発現を抑制する領域について、転写因子の単離等、解析を進める予定である。
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