計画研究
DREB2Aタンパク質は、プロテアソームによる選択的分解を受けていて、通常条件下では不安定で乾燥や高温のストレスにより安定化する。DREB2Aの分解に関わるE3リガーゼとして、DRIP1/2が同定されている。本年度、DRIP1/2欠損株においてもDREB2Aのストレスに応答した安定化が起こること、DRIP1/2欠損株では野生型と比べストレス時のDREB2Aの蓄積量が多くなることから、ストレス下でのDREB2Aの安定化には、DRIP1/2に依存しない機構が働いていることを示した。DREB2Aは核に局在するタンパク質であるが、核局在シグナルを同定して破壊し、核移行しないようにしたところ、細胞内に高蓄積した。従って、DREB2Aの選択的分解には核移行が必要であり、核内の因子が関与していることが示唆された。DREB2A標的遺伝子は乾燥または高温ストレス特異的な誘導性を示す。これまでに、このような特異性はプロモーターの配列によって制御されていることを明らかにしている。本年度、プロモーターを断片化して更に変異を導入する実験から、このようなストレス特異性は、結合配列の近傍の配列の影響を受ける可能性が示された。DREB2A遺伝子の転写制御に関し、これまでに乾燥および高温に応答した転写活性化に必要なシスおよびトランス因子をそれぞれ同定しているが、本年度は、非ストレス時にDREB2A遺伝子のプロモーターに作用する転写抑制因子として、GRF7を単離した。GRF7の機能欠損変異体では、非ストレス条件でDREB2Aを含む多数の乾燥ストレス誘導性遺伝子の発現が上昇しており、生育が抑制されていた。従って、シロイヌナズナは生育に適した条件下で最大限に生長するために、GRF7によって、生育の妨げとなる環境ストレス応答を積極的に抑制するという仕組みを持っていると考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
DREB2A遺伝子の転写活性化機構については、高温と乾燥ストレスに対する応答性を決定すシスおよびトランス因子を既に同定した。さらに、DREB2Aの発現が通常の生育条件では積極的に抑制されているという当初予測していなかったことが明らかになり、その分子機構も明らかになった。DREB2Aの翻訳後調節と標的遺伝子の特異性決定機構についても、概ね当初の計画通りに進行している。
DREB2Aの活性化機構の解析においては、翻訳後制御に関係するドメインの解析を進める。また、植物体や培養細胞からの免疫沈降によるDREB2Aの分離と、相互作用因子や翻訳後修飾の解析を進めるとともに、安定性制御に関する解析も進める。DREB2Aによる下流遺伝子のストレス特異的な発現制御機構については、断片的あるいは変異を加えたプロモーターにレポーター遺伝子をつないで導入した形質転換体の作出と解析を進める。高温ストレスに応答したDREB2A遺伝子の発現にはHsfA1転写因子群が機能していることを示してきたが、HsfA1は恒常的に発現していることから、HsfA1の活性が翻訳後レベルでいかに調節されているのかを解析していく。
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