計画研究
高温ストレスに応答したDREB2Aの転写制御は、熱ショック転写因子(HSF)のHsfA1が担っているが、HsfA1遺伝子は恒常的に発現しているので、下流の活性化には何らかの制御が関与していると考えられる。制御因子の候補として、転写抑制ドメインを持つHSFであるHsfBについて、一過的発現系においてDREB2Aのプロモーター断片を含むレポーターの活性を低下させることを確認した。またHsfA1のタンパク質上で活性を抑制するようなドメインの探索を行うとともに、質量分析計を用いた解析からHsfA1上のリン酸化部位をいくつか同定し、一過的発現系において、これらの配列の機能を解析した。DREB2Aの活性化機構の解析においては、翻訳後調節に関係するドメインを標的とした変異導入を行い、一過的発現系を用いた解析からSer/Thrのクラスターが活性抑制に重要であることを示した。また、このドメインは分子内で移動させてもレポーター活性を抑制できることを示した。DREB2Aの活性調節にはタンパク質の不安定化も関与していて、分解に関わるE3リガーゼとして、DRIP1/2が同定されている。プロテアソーム阻害剤を用いた実験から、DREB2Aはストレス下でも分解されることが明らかになり、高温ストレス下では、DRIP1/2以外のE3リガーゼがDREB2Aの不安定化に関わっていることが示された。DREB2A下流遺伝子のストレス特異的な発現制御機構については、高温ストレス特異的な発現パターンを示すHsfA3遺伝子のプロモーター解析を進めた。HsfA3のプロモーターには、DREB2Aの標的配列であるDREが2個ある。解析の結果、2個のDREを含む領域、更にはこの領域内の下流側のDREを含む50塩基対の配列のみでも高温誘導性を示すことが確かめられた。
2: おおむね順調に進展している
DREB2A遺伝子の転写制御について、HsfA1やHsfBの解析が進展した。DREB2Aタンパク質の翻訳後制御について、安定性と活性制御の両方の面で進展があった。またストレス特異的な活性制御機構につながる下流の特異性選択機構についても計画通りに進展した。
高温ストレスに応答したDREB2A等の高温誘導性遺伝子の発現制御機構を明らかにするため、HsfA1転写因子群を中心とした解析を続ける。HsfA1内において活性制御に関わるドメインやアミノ酸残基の候補について、形質転換植物を用いて機能を解析する。DREB2Aの活性化機構については、翻訳後制御に関係するドメインへの変異導入あるいはドメイン交換を行ったDREB2Aを発現するシロイヌナズナを用いた解析を行う。また、これらを用いて、相互作用因子や翻訳後修飾の探索も行っていく。DREB2Aによる下流遺伝子の特異的な発現制御機構については引き続きレポーターの解析を続ける。
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