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2013 年度 実績報告書

栄養応答における新規転写後制御機構の解明

計画研究

研究領域大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析
研究課題/領域番号 22119006
研究機関北海道大学

研究代表者

内藤 哲  北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20164105)

研究期間 (年度) 2010-06-23 – 2015-03-31
キーワードmRNA分解 / リボソーム / 翻訳停止 / 試験管内翻訳系 / シロイヌナズナ
研究概要

様々な環境条件下での植物の持続的成長には,環境変動に対して細胞内恒常性を厳密に維持する機構が不可欠である。シスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)は,植物においてメチオニン生合成の鍵段階を触媒する。メチオニンの生合成はCGSをコードするCGS1遺伝子の翻訳段階で,メチオニンの代謝産物であるS-アデノシルメチオニン(AdoMet)に応答したSer-94コドンでの翻訳停止と共役したCGS1 mRNAの分解によってフィードバック制御される。
AdoMetに応答した翻訳停止において,後続のリボソームの追突により数珠つなぎになる。昨年度までに、数珠つなぎになったリボソームの停止位置を同定し,追突したリボソームが非常にタイトにスタックしていることを明らかにした。数珠つなぎになったリボソームの停止状態を明らかにするため,昨年度に引き続き,ピュロマイシンによるペプチジル-tRNAの離脱反応(ピュロマイシン反応)の詳細な解析を行い,数珠つなぎになったリボソームが、翻訳伸長反応の殿段階で停止しているかを考察した。また,Ser-94コドンでの翻訳停止に至る過程でのピュロマイシン反応および,ペジレーションアッセイ法でリボソームの出口トンネル内での新生ペプチドの状態を解析した。さらに,リボソーム大サブユニットのrRNAについて,化学修飾法およびUVクロスリンク法による解析を行ない,翻訳停止に至る過程における,リボソーム側の状態の変化の解析も行なった。これら一連の解析により,AdoMetに応答した翻訳停止に至る課程でのmRNA:リボソーム:新生ペプチド複合体の状態の変化を考察した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

AdoMetに応答してSer-94で翻訳停止が起こると,後続のリボソームがその後ろに数珠つなぎになるが,CGS1 mRNAの分解はエンドヌクレアーゼにより,これら数珠つなぎになったリボソームに対応する位置で切断されると考えられる。一方,通常の翻訳停止においても,翻訳停止に関わる因子の作用には翻訳伸長時よりも時間がかかると考えられており,翻訳終止コドンの後ろにリボソームが数珠つなぎになることが報告されている。しかしながら、こうした,いわば生理的な数珠つなぎ状態では数珠つなぎになったmRNAに対応した位置でのmRNAの切断は報告されていない。同義コドン置換による翻訳停止位置の同定,ピュロマイシン反応によるリボソームの翻訳停止状態の解析,ペジレーションアッセイ法によるCGS新生ペプチドのコンフォメーションの解析,およびrRNAについての化学修飾法ならびにUVクロスリンク法によるコンフォメーション変化の解析により得られ結果は,いずれも本研究の研究目的であるAdoMetに応答した翻訳停止とこれがトリガーするmRNA分解が如何にしてもたらされるかを解明する上で,重要な知見である。これらの成果は,J. Biol. Chem.誌に受理されている。また,領域内共同研究による他の応答反応に敷衍した研究を推進する面では,植物のホウ素応答および低温応答におけるmRNA安定性制御についての解析を進めた。

今後の研究の推進方策

リボソームにおける翻訳伸長の反応は,大きく分けて,(1)アミノアシル-tRNAがA部位に入ってくるデコーディング,(2)A部位のアミノアシル-tRNAとP部位のペプチジル-tRNAの間のペプチド転移反応,(3)リボソームが1コドン進む転座,の3段階からなる。これまでに報告されている翻訳伸長の停止では,いずれもリボソームがペプチド転移反応の段階で停止しているが,AdoMetに応答したCGS1 mRNAの翻訳停止では,リボソームが転座前の段階で停止しており,A部位に翻訳中間産物であるペプチジル-tRNAが位置するというユニークな特徴を持つ。これまでに本研究において,ペジレーション反応を利用した新生ペプチドの解析により,リボソーム出口トンネル内においてMTO1領域を含むCGS1新生ペプチドがAdoMetに応答して収縮したコンフォメーションを取ることを報告し,今年度は,数珠つなぎになって翻訳停止したリボソームの状態をピュロマイシン反応により明らかにした。今後の興味ある課題としては,Ser-94コドンでAdoMetに応答したCGS1 mRNAの翻訳停止に至る過程でのリボソームの状態変化を詳細にあきらかにすることである。次年度は,研究期間の最終年度であり,これまでに本研究で開発した手法,あるいは,CGS1 mRNAの翻訳の解析のために工夫してきた方法論を駆使して,AdoMetの検知から翻訳停止に至る素過程に迫る解析を行なう。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] Ribosomes in a stacked array: Elucidation of the step in translation elongation at which they are stalled during S-adenosyl-L-methionine-induced translation arrest of CGS1 mRNA.2014

    • 著者名/発表者名
      Yamashita, Y., Kadokura, Y., Sotta, N., Fujiwara, T., Takigawa, I., Satake, A., Onouchi, H. and Naito, S.
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 289 ページ: 12693-12704

    • DOI

      10.1074/jbc.M113.526616

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A halt in poly(A) shortening during S-adenosyl-L-methionine-induced translation arrest in CGS1 mRNA of Arabidopsis thaliana.2013

    • 著者名/発表者名
      Yamashita, Y., Lambein, I., Kobayashi, S., Onouchi, H., Chiba, Y. and Naito, S.
    • 雑誌名

      Genes and Genetic Systems

      巻: 88 ページ: 241-249

    • DOI

      10.1266/ggs.88.241

    • 査読あり
  • [学会発表] 環境変化に適応するためのmRNA分解制御2014

    • 著者名/発表者名
      鈴木悠也,以西史織,荒江星拓,峰田克彦,平井優美,山口淳二,Pamela J. Green,内藤 哲、千葉由佳子
    • 学会等名
      第55回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      富山大学(富山市)
    • 年月日
      20140318-20140320
  • [学会発表] 低温ストレス応答に関わるCBF遺伝子のmRNA分解制御2014

    • 著者名/発表者名
      以西史織,峰田克彦,平井優美,鈴木悠也,山口淳二,内藤 哲、千葉由佳子
    • 学会等名
      第55回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      富山大学 (富山市)
    • 年月日
      20140318-20140320
  • [学会発表] ホウ素に応答してリボソームは最小uORF,AUGUAAで停止する2014

    • 著者名/発表者名
      田中真幸,三輪京子,千葉由佳子,尾之内均、内藤 哲,藤原 徹
    • 学会等名
      第55回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      富山大学 (富山市)
    • 年月日
      20140318-20140320
  • [学会発表] A halt in poly(A) shortening during S-adenosyl-L-methionine-induced translation arrest in CGS1 mRNA of Arabidopsis.2014

    • 著者名/発表者名
      Yui Yamashita, Ingrid Lambein, Soko Kobayashi, Hitoshi Onouchi, Yukako Chjiba, Satoshi Naito
    • 学会等名
      第55回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      富山大学 (富山市)
    • 年月日
      20140318-20140320
  • [学会発表] シロイヌナズナCGS1 mRNAの翻訳制御におけるリボソームの停滞と新生ペプチドの収縮2013

    • 著者名/発表者名
      山下由衣,尾之内均,内藤 哲
    • 学会等名
      第31回日本植物細胞分子生物学会大会
    • 発表場所
      北海道大学 (札幌市)
    • 年月日
      20130910-20130912
  • [学会発表] シロイヌナズナCGS1遺伝子の転写後制御機構におけるリボソーム出口トンネルの研究2013

    • 著者名/発表者名
      大橋悠文,尾之内均、内藤 哲
    • 学会等名
      第31回日本植物細胞分子生物学会大会
    • 発表場所
      北海道大学 (札幌市)
    • 年月日
      20130910-20130912
  • [学会発表] シロイヌナズナCGS1 mRNAの翻訳停止におけるリボソーム出口トンネルの解析2013

    • 著者名/発表者名
      大橋悠文,尾上典之,尾之内均、内藤 哲
    • 学会等名
      第15回日本RNA学会年会
    • 発表場所
      愛媛県民文化会館 (松山市)
    • 年月日
      20130724-20130726
  • [学会発表] S-アデノシルメチオニンはシロイヌナズナCGS1 mRNAにおける翻訳アレストに先立って新生ペプチドの収縮を引き起こす2013

    • 著者名/発表者名
      山下由衣,尾之内均,内藤 哲
    • 学会等名
      第15回日本RNA学会年会
    • 発表場所
      愛媛県民文化会館 (松山市)
    • 年月日
      20130724-20130726
  • [学会発表] シロイヌナズナホウ素輸送隊遺伝子のホウ素栄養条件に応じた発現はshort uORFを介して起こる2013

    • 著者名/発表者名
      田中真幸,千葉由佳子,三輪京子,尾之内均、内藤 哲,藤原 徹
    • 学会等名
      第15回日本RNA学会年会
    • 発表場所
      愛媛県民文化会館 (松山市)
    • 年月日
      20130724-20130726

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公開日: 2015-05-28  

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