研究領域 | 大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析 |
研究課題/領域番号 |
22119008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
経塚 淳子 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90273838)
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キーワード | 分枝 / 腋芽 / 休眠 / ストリゴラクトン / マイクロアレイ解析 |
研究概要 |
葉の付け根にある腋芽は分枝として成長する。植物は、成長段階や環境条件に応じて腋芽の状態(伸長・休眠)を柔軟に変化させ、個体サイズや形をコントロールする。したがって、腋芽の休眠は植物が環境を生き抜くために不可欠な過程であるが、休眠現象の分子レベルでの理解は進んでいない。 腋芽休眠の分子レベルでの詳細な記述と制御ネットワークの解明を研究目的とした。まず、成長初期から規則的に腋芽が形成され、休眠するイネを研究対象とした。腋芽での細胞分裂を、in situハイブリダイゼーション法で継時的に解析し、腋芽形成から休眠への相転換のタイミングを把握することに成功した。このシステムは独自性が高く、今後の研究の基盤となる大きな成果である。また、休眠にともない、腋芽での細胞分裂が急激に停止することが明らかになった。 この実験系と岡山大に設置されたレーザーマイクロダイセクション(LMD)システムを利用して、休眠開始時の腋芽だけをサンプリングすることにより、休眠にともなう遺伝子発現の変化を明らかにした。休眠時には非常に多数の遺伝子の発現が上昇するのに対し、発現が減少する遺伝子は少数であった。発現が上昇した遺伝子群には、ABA反応性遺伝子、ABA合成の鍵遺伝子や分解に関わる遺伝子が多数含まれていた。このことから、腋芽では休眠にともないABAが急速に合成(あるいは移送)すると考えられた。これは予想外の興味深い成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腋芽の休眠現象を理解するためにはまず、腋芽で何が起きているかを分子レベルで詳細にに述する必要がある。このための腋芽解析システムの構築を達成したことは今後の研究の進展にとって非常に重要である。さらに、この実験系と岡山大に設置されたレーザーマイクロダイセクション(LMD)システムを利用して休眠時の腋芽における遺伝子発現の変化の網羅的解析を行い、非常に有用なデータを得た。これらのデータには予想外の結果も含まれており、これらのデータに基づきさらに研究を発展させることができる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、腋芽の休眠を解析するための実験系を確立し、それを使って基礎的データを得ることに成功した。このうち、休眠開始時の腋芽での①ABA関連遺伝子の発現上昇、②細胞周期抑制遺伝子の発現上昇、③細胞周期促進遺伝子の発現低下、④リボソームRNA遺伝子の発現低下の4点に着目し、これらと腋芽休眠の関連について研究を進める。 ストリゴラクトンは腋芽伸長を抑制する植物ホルモンであるが、腋芽休眠におけるストリゴラクトンの作用はあきらかではない。これまでに構築した実験系を用い、腋芽休眠においてストリゴラクトンの作用に関わる遺伝子を探索する。
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