研究領域 | 大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析 |
研究課題/領域番号 |
22119009
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
梅田 正明 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (80221810)
|
キーワード | 根 / 成長 / 細胞周期 / エンドサイクル / 環境 |
研究概要 |
本研究では、根端の分裂領域から伸長領域の境界部分において、細胞周期が通常の分裂サイクルからエンドサイクル(核内DNA倍加を伴う)に移行する分子メカニズムを明らかにしようとしている。平成23年度は、CCS52A1遺伝子(分裂領域で発現せず、伸長領域から発現し始める)のプロモーターに結合する転写因子を酵母one-hybrid法を用いて同定した。その結果、数種類のファミリーに属する転写因子を単離することに成功した。また、以前のプロモーター解析の結果をもとに、サイトカイニン情報伝達の直下で働くレスポンスレギュレーター(ARR)に注目して解析したところ、その中の特定の因子がCCS52A1遺伝子のプロモーターに結合することが示された。そこで、変異体や発現レポーター系統を用いて遺伝学的解析を行ったところ、サイトカイニンシグナルの下流でCCS52A1遺伝子の発現が誘導されること、またこの発現制御がエンドサイクルへの移行に重要であることが明らかになった。酵母one-hybrid法により単離されたその他の転写因子については、現在変異体を用いて根の表現型解析を進めている。 本研究では、組織内で細胞周期進行をモニタリングするために、細胞周期マーカー遺伝子の開発を行っている。まず、発現量が高いM期特異的プロモーターを取得するために、マイクロアレイデータをもとに候補遺伝子を絞り込み、それらのレポーター遺伝子を作成して発現量が高い遺伝子を探索している。また、すでに完成に近いM期とS期のマーカー遺伝子を組み合わせることにより、細胞周期のイメージングに利用できる二重マーカーを作成中である。さらに、根端における細胞周期進行をリアルタイムでイメージングするために、共焦点顕微鏡を用いた培養・観察システムの開発も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エンドサイクルへの移行機構の解析は、サイトカイニンシグナルとの関連性が見えてきたので、24年度以降の展開が非常に興味深くなってきている。一方、細胞周期イメージング系の開発は、M期マーカーの発現が予想以上に弱かったため、新たにM期特異的プロモーターの単離を始めたが、24年度はそれを待たずに既存のM期マーカーを用いて各種ストレス処理の予備実験を行う予定なので、大きな支障はない。
|
今後の研究の推進方策 |
エンドサイクルへの移行機構の解析は、サイトカイニンシグナルの下流でCCS52A1遺伝子の発現を制御する経路と、オーキシンシグナルを制御する経路の間で何らかのクロストークがあるのかどうかが一つの課題である。この点については、今後遺伝学的解析を中心に解明を進めていく。また、細胞周期イメージング系の開発においては、強力なM期特異的プロモーターの単離を精力的に行っていくと同時に、なるべく早く二重マーカーとモニタリング系の確立を目指す予定である。また、これらの系を用いて、アルミニウムやホウ素などのストレスに対する細胞周期レベルの応答性についても解析を進めていく。 研究計画の変更は特にない。
|