植物の成長は光、温度、乾燥、栄養といった環境要因によって大きく影響を受ける。最近、こうした植物の成長変化が受動的な成長阻害ではなく、積極的な成長戦略として起こっていることが明らかとなってきた。我々は、こういった能動的な細胞成長制御が環境変動下での成長戦略として重要な機能となっていると考え、細胞成長制御機構の分子実体の解明を目指し研究をすすめている。我々はこれまでに植物に特有なトライヘリックス型転写因子 GTL1の機能解析を進め、GTL1がCCS52A1遺伝子の発現を低下させることによって核内倍加周期を終了し、その結果細胞成長を抑制することを見いだした。さらにGTL1のホモログであるDF1との二重変異株(gtl1 df1)の解析を通して、GTL1およびDF1が根毛の成長制御に大きく関係していることを見出した。本年度は、根毛成長制御に注目した解析を進め、細胞成長を負に制御する転写因子としてZnフィンガータンパク質であるOBP4を新たに発見した。さらにゲノムワイド発現解析を通して、GTL1、DF1およびOBP4それぞれの下流因子の探索を行ったところ、共通して根毛成長を正に制御する因子が見出された。興味深いことに、根毛細胞の分化を制御するGL2とも下流因子のオーバーラップがあり、根毛成長に至る過程での発生情報と環境情報のクロストークを司る分子実体が見えはじめている。そこで我々が注目した転写因子によって直接制御される因子の検証を行うとともに、互いが制御する遺伝子群ネットワークの解析を開始した。
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