計画研究
数理モデルによって,特定の光合成能を有するイネに任意の玄米数と玄米配置を与えたときの各玄米登熟度を予測できれば,総収量を最大化する玄米数と玄米配置をもつイネ穂構造を数理モデルによって提案することが可能になる.そこで,我々は育種研究へ新たな数理的手法を提供することを目的に,イネのショ糖転流と玄米登熟を捉えた師管栄養輸送モデルを開発した.師部におけるショ糖転流の駆動力は,ショ糖濃度勾配によって生じる膨圧差によって生じると考える圧流説が現在支配的である.本研究ではこの圧流説を採用し,ソース葉と複数のシンク(玄米)が師管(エッジ)で連結されたグラフとして複合的師管ネットワークをモデル化し,各ソースとシンクにおけるショ糖ダイナミクスを離散空間常微分方程式系によって記述した.グラフの形状はコシヒカリの穂構造をもとに算出した.松葉(1991 中国農業試験場研究報告11-58)によって提案された完全展開モデルをもとに,玄米数は固定し玄米配置のみが異なるイネ穂ネットワークを仮想的に3種類作出し,ネットワーク間で収量比較を行った.その結果,一次枝梗のみあるいは少数の二次枝梗を発達させたネットワークにおいて高い収量が予測されたが,三次枝梗まで発達させたネットワークでは未熟な玄米が認められ収量は低いままであった.また,高い収量が予測されたイネ穂ネットワークでは、ネットワーク上の全ての玄米が均質な登熟動態を示した.総光合成速度を増加させた場合にも同様の結果が得られた.これらの結果は,均質なショ糖輸送が可能な玄米配置をデザインすることによって、収量増加を実現できることを示唆するものである.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件)
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