研究領域 | 植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで |
研究課題/領域番号 |
22120002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷 あきら 京都大学, 理学研究科, 教授 (40183082)
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キーワード | 環境応答 / 光受容体 / 植物 / 細胞 / シグナル伝達 |
研究概要 |
植物は、特有の光受容体によって光情報を感知している。分子遺伝学的手法の急速な発展により、光受容体の分子レベルの作用機構が解明されつつあるが、この方法論の限界も見えてきている。一つには、「個々の細胞の応答が個体の応答としてどのように統合されるのか」という問題が未解決である。また、最も最近発見されたこともあり、フォトトロピンの作用機構はまったく不明である。そこで、昨年に引き続き、新学術領域という枠組みを十二分に活用し、他研究班との緊密な連携の下、植物の光応答に関する上記の問題解決をめざす研究を進めた。加えて、植物環境感覚に研究の新しい試みとして、機械刺激に対する細胞応答の研究を開始した。 まず、昨年度に開発したシロイヌナズナ芽生えのフェムト秒レーザーによる顕微手術法を応用し、フィトクロムによる避陰応答における茎頂の役割について、茎頂部と伸長部の連絡を切断して調べた。また、芽生えの各器官・組織について、細胞小集団を対象とした遺伝子発現解析のための実験手法を確立した。さらに、植物の光応答研究へ質量顕微鏡を応用すべく予備実験として芽生えを幾つかの部位に切り分けて抽出物について質量スペクトル解析を行った。 一方、細胞レベルの研究では、昨年度に引き続き小胞輸送に関連する低分子量Gタンパク質ARFIについて、その細胞内分布の光による調節機構の解析を進めた。また、三村班との連携のもと、収集した細胞内構造を可視化した多数の系統を用いて、網羅的にオルガネラレベルの光応答を探索したが、従来知られている応答が確認されるにとどまった。また、この過程で機械刺激に対する細胞応答が新たに発見されたため、その解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に推移している。フェムト秒レーザーと小集団遺伝子発現解析については、手法がほぼ確立し、光応答研究として興味深い結果が得られつつある。質量顕微鏡については予定よりやや遅れ気味であるが、光に応答する未知物質の証拠がつかめつつある。また、細胞レベルの研究では網羅的解析から新しいオルガネラの光応答は発見できなかったが、機械刺激に対する応答が確認されており、今後の発展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果は、本新学術領域研究の他班との協力によるところが大きい。今後も、これらの共同研究を軸に、シロイヌナズナの芽生えをモデルとして、個体レベルの光応答に関するこれまでにない時空間的な解析を進める。また細胞レベルの応答については、当初から予定していたフォトトロピンの研究に加え、本研究で発見された新しい機械刺激応答を軸に、新しい研究を展開する。
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