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2013 年度 実績報告書

陸上植物の水獲得に機能する根の水応答機構の解明

計画研究

研究領域植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで
研究課題/領域番号 22120004
研究機関東北大学

研究代表者

高橋 秀幸  東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70179513)

研究期間 (年度) 2010-06-23 – 2015-03-31
キーワード水分屈性 / MIZ1 / MIZ2 / オーキシン / グルタミン酸 / カルシウム / シロイヌナズナ / イネ
研究概要

本研究では、根の水分屈性の分子機構を明らかにするための解析を行っている。平成25年度に得た主な成果は、以下の通りである。
1. 免疫沈降法およびプロテオーム解析によって、水分屈性制御因子MIZ1と相互作用する候補分子としてNPH3を同定し、その機能欠損系統の水分屈性能が低下していることを明らかにした。また、これまでに単離したmiz1-1突然変異体の表現型を抑圧する突然変異体 (mzp1) の変異原因遺伝子が第4染色体上長腕の約150 kbpの領域に座上することを明らかにし、複数の塩基置換を確認した。さらに、MIZ1過剰発現体を用いたトランスクリプトーム解析を行い、MIZ1の発現量の違いで変動する因子や水分屈性応答と相関のある変動を示す因子の特定を進めた。2. フェムト秒レーザーを用いてシロイヌナズナの根のコルメラ細胞の破壊が、重力屈性と水分屈性に与える影響を解析した結果、コルメラ細胞の破壊によって重力屈性の低下が認められたが、根の水分屈性は無処理区と同程度で、水分屈性へのコルメラ細胞の寄与は、重力屈性とは異なることがわかった。3. シロイヌナズナはオーキシン輸送非依存的に水分屈性を発現するが、イネはオーキシン輸送依存的な水分屈性を示すことを明らかにした。4. MIZ1の機能発現にMIZ2が必要であることを示してきたが、その詳細は未解明であった。そこで、miz2バックグラウンドでMIZ1-GFPを発現する系統を作出し、水分屈性発現時のMIZ1-GFPの局在を調べた結果、MIZ2は水分屈性発現に伴い、MIZ1の局在を直接的または間接的に変化させる機能を有すると考えられた。5. L-グルタミン酸が、根端のグルタミン酸リセプターを介して細胞内カルシウム濃度を上昇させることによって、水分屈性を著しく亢進することが見出された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

根の水分屈性に果たすMIZ1とMIZ2の機能を明らかにするための解析では、これまでの成果に加えて、それらと相互作用する分子を見出すとともに、miz1サプレッサーの原因遺伝子を同定する解析も進んだ。また、MIZ2がMIZ1の局在制御にかかわる可能性を見出し、今後ユニークな小胞輸送系とMIZ1の関係を解明できると期待され、さらに、MIZ1およびMIZ2が機能する細胞群を特定するための解析も順調に進んでいる。
昨年度までに遅れ気味であった、MIZ1過剰発現体などの突然変異体を用いたトランスクリプトームならびにフェムト秒レーザー実験を実施することができて、その結果の解析も進んでいる。加えて、L-グルタミン酸処理が水分屈性を著しく促進し、それが細胞内カルシウム濃度を上昇させて水分屈性を促進する仕組みを見出したことの意義も大きい。

今後の研究の推進方策

最終年度は、それぞれの成果の論文作成と同時に、継続中の解析を進めて、各実験項目を完結させたい。研究計画に大きな変更はないが、これまでの仮説に反して、シロイヌナズナでは、重力感受を担うコルメラ細胞は水分屈性のための水分勾配感受に関与しない可能性が見出され、水分勾配センサーの実体を理解するための解析を、根冠以外の組織(細胞群)にて検討する必要がある。MIZ1およびMIZ2の機能細胞群の特定を目的に、複数の方法で解析しているが、IR-LEGO法については、基生研の指導を仰ぎながら行う。さらに、水分屈性発現機構における植物種による違いも明確になりつつあり、とくに既知のオーキシン輸送系を介した水分屈性制御系と、それに非依存的な水分屈性制御系、それらのクロストーク機構が当該分野のブレークスルー的な知見になると考えられるので、それらの解析を優先的に進める。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (19件)

  • [雑誌論文] GNOM regulates root hydrotropism and phototropism independently of PIN-mediated auxin transport2014

    • 著者名/発表者名
      Moriwaki T, Miyazawa Y, Fujii N, Takahashi H
    • 雑誌名

      Plant Science

      巻: 215-216 ページ: 141-149

    • DOI

      10.1016/j.plantsci.2013.11.002

    • 査読あり
  • [雑誌論文] MIZ1-regulated hydrotropism functions in the growth and survival of Arabidopsis thaliana under natural conditions2013

    • 著者名/発表者名
      Iwata S, Miyazawa Y, Fujii N, Takahashi H
    • 雑誌名

      Annals of Botany

      巻: 112 ページ: 103-114

    • DOI

      10.1093/aob/mct098

    • 査読あり
  • [学会発表] L-Glutamate enhances root hydrotropism via glutamate-receptor-mediated Ca2+ influx independently of MIZ1-signaling in Arabidopsis thaliana2014

    • 著者名/発表者名
      Satoru Iwata, Nobuharu Fujii, Akie Kobayashi, Hideyuki Takahashi
    • 学会等名
      第55回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      20140318-20140320
  • [学会発表] MIZ2/GNOM is involved in subcellular localization of MIZ1 in the root cortex during hydrotropism of Arabidopsis roots2014

    • 著者名/発表者名
      Noriyuki Kuya, Hideyuki Takahashi, Yutaka Miyazawa
    • 学会等名
      第55回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      20140318-20140320
  • [学会発表] L-Glutamate plays an important role in early phase of hydrotropic response via glutamate-receptor dependent Ca2+ influx and MIZ1 distribution in Arabidopsis roots2013

    • 著者名/発表者名
      Satoru Iwata, Nobuharu Fujii, Akie Kobayashi, Hideyuki Takahashi
    • 学会等名
      2013 ASCB Annual Meeting
    • 発表場所
      New Orleans, Louisiana, USA
    • 年月日
      20131214-20131218
  • [学会発表] シロイヌナズナ根の水分屈性制御を担う GNOM の機能ドメインの遺伝学的解析2013

    • 著者名/発表者名
      森脇哲平、宮沢豊、藤井伸治、高橋秀幸
    • 学会等名
      東北植物学会第3回大会
    • 発表場所
      秋田
    • 年月日
      20131214-20131215
  • [学会発表] シロイヌナズナ水分屈性制御因子MIZ1の局在制御に対するMIZ2の機能の解析2013

    • 著者名/発表者名
      久家徳之、高橋秀幸、宮沢豊
    • 学会等名
      東北植物学会第3回大会
    • 発表場所
      秋田
    • 年月日
      20131214-20131215
  • [学会発表] 水分屈性制御因子MIZ1と相互作用して水分屈性を調節する因子の探索2013

    • 著者名/発表者名
      山崎誠和、小林啓恵、宮沢豊、藤井伸治、高橋大輔、河村幸男、上村松生、高橋秀幸
    • 学会等名
      東北植物学会第3回大会
    • 発表場所
      秋田
    • 年月日
      20131214-20131215
  • [学会発表] キュウリ内皮細胞における CsPIN1 オーキシン排出キャリアの局在変化の重力応答性2013

    • 著者名/発表者名
      藤井伸治、山崎千秋、宮沢豊、鎌田源司、笠原春夫、長田郁子、嶋津徹、伏島康男、東端晃、山崎丘、石岡憲昭、高橋秀幸
    • 学会等名
      東北植物学会第3回大会
    • 発表場所
      秋田
    • 年月日
      20131214-20131215
  • [学会発表] グルタミン酸はシロイヌナズナ根の水分屈性発現初期に重要な役割を果たす2013

    • 著者名/発表者名
      岩田 悟、藤井 伸治、小林 啓恵、高橋 秀幸
    • 学会等名
      植物化学調節会第48回大会
    • 発表場所
      新潟
    • 年月日
      20131031-20131101
  • [学会発表] イネ幼根の水分屈性の発現に及ぼすオーキシン関連阻害剤処理の影響2013

    • 著者名/発表者名
      中島佑介、藤井伸治、宮沢豊、小林啓恵、高橋秀幸
    • 学会等名
      植物化学調節会第48回大会
    • 発表場所
      新潟
    • 年月日
      20131031-20131101
  • [学会発表] 水分屈性制御因子MIZ1と相互作用する因子の探索2013

    • 著者名/発表者名
      山崎誠和、小林啓恵、宮沢豊、藤井伸治、河村幸男、上村松生、高橋秀幸
    • 学会等名
      日本宇宙生物科学会第27回大会
    • 発表場所
      つくば
    • 年月日
      20130927-20130928
  • [学会発表] シロイヌナズナのpgm arg1二重突然変異体を利用した新規重力屈性突然変異の単離の試み2013

    • 著者名/発表者名
      藤井伸治、山川あゆみ、宮沢豊、山下雅道、高橋秀幸
    • 学会等名
      日本宇宙生物科学会第27回大会
    • 発表場所
      つくば
    • 年月日
      20130927-20130928
  • [学会発表] エンドウの上胚軸と根における重力応答と回旋転頭運動の関係; 重力屈性突然変異体を用いた解析2013

    • 著者名/発表者名
      金慧正、小林啓恵、藤井伸治、宮沢豊、高橋秀幸
    • 学会等名
      日本宇宙生物科学会第27回大会
    • 発表場所
      つくば
    • 年月日
      20130927-20130928
  • [学会発表] キュウリ根における重力応答依存的なオーキシン応答を検出するための遺伝子プローブの同定2013

    • 著者名/発表者名
      宮沢豊、諸橋恵太、藤井伸治、高橋秀幸
    • 学会等名
      日本宇宙生物科学会第27回大会
    • 発表場所
      つくば
    • 年月日
      20130927-20130928
  • [学会発表] グルタミン酸はシロイヌナズナ根の水分屈性を促進する2013

    • 著者名/発表者名
      岩田悟、藤井伸治、小林啓恵、高橋秀幸
    • 学会等名
      日本植物学会第77回大会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20130913-20130915
  • [学会発表] 微小重力下で亢進されるキュウリ根の水分屈性2013

    • 著者名/発表者名
      高橋秀幸、諸橋恵太、岡本美貴、山崎千秋、藤井伸治、宮沢豊、東端晃、嶋津徹、鎌田源司、笠原春夫、山崎丘、長田郁子、石岡憲昭、伏島康男、小林啓恵
    • 学会等名
      日本植物学会第77回大会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20130913-20130915
  • [学会発表] キュウリ根の水分屈性発現に伴うAux/IAA遺伝子群の発現解析2013

    • 著者名/発表者名
      宮沢豊、諸橋恵太、藤井伸治、高橋秀幸
    • 学会等名
      日本植物学会第77回大会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20130913-20130915
  • [学会発表] Graviresponse induces re-localization of an auxin efflux carrier, CsPIN1, during gravimorphogenesis of cucumber seedlings2013

    • 著者名/発表者名
      Nobuharu Fujii, Chiaki Yamazaki, Yutaka Miyazawa, Motoshi Kamada, Haruo Kasahara, Ikuko Osada, Toru Shimazu, Yasuo Fusejima, Akira Higashibata, Takashi Yamazaki, Noriaki Ishioka, Hideyuki Takahashi
    • 学会等名
      34th Annual Meeting International Gravitational Physiology 2013
    • 発表場所
      豊橋
    • 年月日
      20130623-20130628
  • [学会発表] Graviresponse is indispensable for circumnutation in rice coleoptile2013

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Miyazawa, Yuuta Tomita, Hyejeong Kim, Nobuharu Fujii, Hideyuki Takahashi
    • 学会等名
      34th Annual Meeting International Gravitational Physiology 2013
    • 発表場所
      豊橋
    • 年月日
      20130623-20130628
  • [学会発表] MIZU-KUSSEI1 (MIZ1) regulation of hydrotropism in Arabidopsis roots2013

    • 著者名/発表者名
      Hideyuki Takahashi
    • 学会等名
      30th Annual IPG2013 Root Biology Symposium
    • 発表場所
      Columbia, Missouri, USA
    • 年月日
      20130529-20130531

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公開日: 2015-05-28  

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