細胞内環境の維持と変動は、細胞内で生じるあらゆる生理機能の基盤的要素であり、無機イオン・代謝物質やタンパク質の濃度・分布として捉えることができる。本研究では、温度、塩ストレス時の水・イオン環境、必須栄養素のリン酸への応答、さらに病原体や共生微生物に着目し、細胞膜、および小胞体から液胞につながる単膜系オルガネラの構成要素である膜構造、構成タンパク質、あるいは低分子量代謝物質や無機イオン類が、これらの外部環境の変化に対してどのように変動するかを明らかにし、その分子機構を解析することを目的とした。平成22年度の研究成果として、 1.アフリカ原産のセントポーリアの葉で、柵状組織の細胞において急激な温度降下により、傷害の初期に柵状組織の細胞質pHが下降し、液胞内pHが上昇することと、その時間経過を明らかにした。また、細胞内pHが変化すると同時に、液胞が変形していることを示す結果も得た。 2.低リン環境で生育したシロイヌナズナ根が高リン環境に遭遇した際のリン応答解析系の確立を進めた。 3.アブラナ科植物は、葉のミロシン細胞の液胞に集積したミロシナーゼの働きにより、食害部位で病害虫の忌避物質を生産する。小胞体由来のERボディに大量のβグルコシダーゼ(PYK10)を蓄積し、PYK10が根に大量に蓄積されているindolyl glucosinolate(I3G)に対して分解活性をもち、ミロシナーゼとして機能していることが分かった。
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