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2012 年度 実績報告書

環境感覚を支える植物液胞動態とその適応機構

計画研究

研究領域植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで
研究課題/領域番号 22120006
研究機関神戸大学

研究代表者

三村 徹郎  神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20174120)

研究期間 (年度) 2010-06-23 – 2015-03-31
キーワード液胞 / 温度ストレス / 無機イオン環境 / 食害応答 / セントポーリア / シロイヌナズナ / 単膜系オルガネラ / 代謝物質
研究概要

細胞内環境の維持と変動は、細胞内で生じるあらゆる生理機能の基盤的要素であり、無機イオン・代謝物質やタンパク質の濃度・分布として捉えることができる。本研究では、温度、塩ストレス時の水・イオン環境、必須栄養素のリン酸への応答、さらに病原体や共生微生物に着目し、細胞膜、および小胞体から液胞につながる単膜系オルガネラの構成要素である膜構造、構成タンパク質、あるいは低分子量代謝物質や無機イオン類が、これらの外部環境の変化に対してどのように変動するかを明らかにし、その分子機構を解析することを目的とした。平成24年度の研究成果として、
1.アフリカ原産のセントポーリアの葉で、柵状組織の細胞において急激な温度降下により液胞膜が崩壊して酸性の液胞内容物が漏出し、細胞死に至るという傷害メカニズムを見出し、細胞外のCaイオンが温度傷害の引き金になることを明らかにした。また、大量の柵状細胞の単離が難しかったことから、葉組織を用いて馴化過程のプロテオーム解析を進めた。
2.低リン環境で生育したシロイヌナズナ根が高リン環境に遭遇した際のリン応答遺伝子発現解析を行い、高リン処理後10分~30分で発現する遺伝子を複数見出した。この遺伝子のプロモーター領域にレポーター遺伝子をつなぎ、リン酸応答過程の解析を始め、実際リン添加に伴い、レポーター遺伝子の発現を確認した。
3.アブラナ科植物は、葉のミロシン細胞の液胞に集積したミロシナーゼの働きにより、食害部位で病害虫の忌避物質を生産する。ミロシン細胞は、維管束細胞に隣接して分布しているが、葉原基から両細胞はそれぞれ協調して分化することが分かった。地上部におけるミロシナーゼ集積細胞(ミロシン細胞)の維管束に沿った分化にPIN1のエンドサイトーシスが関与していることを示した。地下部でのERボディの発達にセンチュウ感染応答が関与することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験は、概ね順調に進展しており、当該課題に関する論文も出版され始めている。但し、実験課題の1について、一昨年度の段階において見出された単離細胞系の不均一性が解消しきれなかったため、計画を植物体全体を利用した遺伝子、プロテオーム解析に変えた、その遺伝子探索は順調に始められているが、次世代シークエンサーを利用した解析が、数ヶ月かかるため、各計画実施時期を変更した。また、実験課題2については、シロイヌナズナのリン酸応答遺伝子変異体の作成は無事終わったので、現在その解析を始めるとともに、代謝物質分布解析も続けており、その計画実施時期を変更している。

今後の研究の推進方策

研究課題1については、遺伝子解析を進めている。現在ターゲットとしているCaチャンネル遺伝子がクローニングできれば、その発現解析を行う予定である。また、セントポーリアの形質転換の可能性を検討している。研究課題2については、リン酸添加応答に関与する複数の遺伝子が見出されつつあるので、それらの発現、機能解析を進める予定である。実験課題3については、引き続き二次代謝を介した生物防御応答について解析を進める。また、脂質系分子の関与も明らかになりつつあるので、それについての解析も進める予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Sudden collapse of vacuoles in Saintpaulia sp. palisade cells induced by a rapid temperature decrease.2013

    • 著者名/発表者名
      Kadohama Noriaki, Goh Tatsuaki, Ohnishi Miwa, Fukaki Hidehiro, Mimura Tetsuro, Suzuki Yoshihiro
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 8 ページ: e57259

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0057259

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Circumnutation on the water surface: female flowers of Vallisneria.2013

    • 著者名/発表者名
      Kosuge Keiko, Iida Satoko, Katou Kiyoshi, Mimura Tetsuro
    • 雑誌名

      Scienetific Report

      巻: 3 ページ: 1133

    • DOI

      10.1038/srep01133

    • 査読あり
  • [雑誌論文] GNOM/FEWER ROOTS is required for the establishment of auxin response maximum for Arabidopsis lateral root initiation.2013

    • 著者名/発表者名
      Okumura Ken-ichi, Goh Tatsuaki, Toyokura Koichi, Kasahara Hiroyuki, Takebayashi Yumiko, Mimura Tetsuro, Kamiya Yuji, Fukaki Hidehiro
    • 雑誌名

      Plant & Cell Physiology

      巻: 54 ページ: 406-417

    • DOI

      10.1093/pcp/pct018

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ion gradients in xylem exudate and guttation fluid related to tissue ion levels along primary leaves of barley.2013

    • 著者名/発表者名
      Nagai Makiko, Ohnishi Miwa, Uehara Takeo, Yamagami Mutsumi, Miura Eiko, Kamakura Mai, Kitamura Akira, Sakaguchi Shuichi, Sakamoto Wataru, Shimmen Teruo, Fukaki Hidehiro, Reid Rob, J., Furukawa Akio and Mimura Tetsuro
    • 雑誌名

      Plant, Cell & Environment

      巻: 36 ページ: 1826-1837

    • DOI

      10.1093/pcp/pct107

    • 査読あり
  • [学会発表] リン酸増加に対するシロイヌナズナの根の応答機構2013

    • 著者名/発表者名
      岡田和哉,大西美輪,豊倉浩一,郷達明,七條千津子,深城英弘,三村徹郎
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] 落葉性木本植物のリン酸分配・転流機構の解析2013

    • 著者名/発表者名
      栗田悠子,馬場啓一,大西美輪,姉川彩,小菅桂子,七條千津子,深城英弘, 三村徹郎
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] シロイヌナズナ植物体のオーキシン添加に応答する代謝変動解析2013

    • 著者名/発表者名
      姉川彩,大西美輪,高橋勝利,七條千津子,深城英弘,三村徹郎
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] イワタバコ科植物の葉で生じる温度傷害の発生メカニズム2012

    • 著者名/発表者名
      角浜憲明,大西美輪,姉川彩,郷達明,深城英弘,鈴木祥弘,三村徹郎
    • 学会等名
      第25回植物脂質シンポジ ウム
    • 発表場所
      甲南大学
    • 年月日
      20121130-20121201

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公開日: 2015-05-28  

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