計画研究
1.「オルガネラ相互作用の解析」:黄化芽生え時において、グリオキシソームはリピッドボディと物理的相互作用を行い、脂肪酸の代謝を担う。この相互作用が、ショ糖依存的に制御されていることを明らかにした。さらに、変異体を単離し、その原因遺伝子の1つがリパーゼをコードするSPD1 (SUGAR-DEPENDENT1) であることを明らかにした。ペルオキシソームと葉緑体との相互作用に関して、フェムト秒レーザー解析(連携:細川班)を進め、アクチン細胞骨格の接着機構への影響を解析した。また、オルガネラ接着機構変異体の全ゲノムシークエンスを行い、原因遺伝子の同定を進めるとともに、接着機構欠損の候補変異体に関して解析を進めた。2.「光環境下におけるペルオキシソーム分解機構の解析」:光環境下において、一部のペルオキシソーム内部では、カタラーゼの不活性化による酸化状態が過度に進行し、オートファジーによるペルオキシソーム分解機構が活性化されることを明らかにした。また、オートファジー変異体を用いた生理学的な解析と関連因子の局在解析から、その認識機構の分子メカニズムの一端を明らかにした。3.「ペルオキシソーム機能変換に関与する因子の解析」:脂肪性種子において、黄化芽生え時のグリオキシソームは、光に応答した機能変換により緑葉ペルオキシソームへと内在する酵素群の構成を大きく変化させる。ペルオキシソーム形態異常変異体 (apem10) の解析から同定されたLonプロテアーゼに注目し、この酵素がペルオキシソームの機能変換に関与することを明らかにした。さらに、オートファジーとLonプロテアーゼを介したシステムにより、ペルオキシソームの機能変換が制御されていることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
光環境下においてペルオキシソームは形態を大きく変化させ葉緑体、ミトコンドリアとの物理的相互作用を行う。この過程において代謝産物や様々な物質のやり取り、活性酸素の消去などを行い植物の環境適応に寄与していると考えられる。この現象をより深く遺伝子やタンパク質の機能レベルで理解するために、光に依存した植物細胞内の生理現象を利用し独自に変異体の選抜方法を開発した。実際にこれまで70ほどのペルオキシソームと葉緑体間相互作用変異体を選抜したことは、今後の研究の進展が期待され評価に値すると思われる。さらに、先に選抜したペルオキシソーム形態異常変異体の解析を進めペルオキシソームの輸送に関する植物の新規因子apem9とapem10に関しては専門誌に報告した。これらの成果から、光依存的なペルオキシソームの機能転換にLonプロテアーゼとオートファジーが関わることが明らかとなった。また、解析技術開発グループとの共同研究を積極的に進めている点も評価に値すると思われる。特にA03ケ)レーザー顕微手術と連携して、明暗条件下でのペルオキシソームと葉緑体との接着力測定を行う系の構築を進めた。現在までに、共焦点顕微鏡下において、葉緑体近傍にあるペルオキシソームから5mmの距離に、異なる強度のフェムト秒レーザーを打ち込み、解離度から具体的な接着力を測定する段階まで到達しており、新領域研究班員間の共同研究成果として論文発表の準備を進めている。
環境に応じた植物細胞内のオルガネラ相互作用をより深く理解するためには、遺伝子やタンパク質の機能レベルでの理解が不可欠である。そのために、選抜したオルガネラ相互作用変異体の原因遺伝子同定を網羅的に行う研究を中心に推進する。選抜した相互作用変異体や、ペルオキシソーム形態異常変異体の解析を進める。これら変異株の原因タンパク質の詳細な局在解析や免疫沈降法による相互作用因子の同定を試みる。また、環境に応答した変異体細胞内での代謝産物量の変動、遺伝子発現量の変化、タンパク質の局在や活性の変化等、オルガネラ相互作用の役割を明らかにする解析を行う。更に、前年度の研究で明らかとなったLonプロテアーゼとオートファジーによる光依存的なペルオキシソームの機能転換に働く分子機構の解明を目指す。特に、A03ケ)レーザー顕微手術との連携においては、選抜した変異体におけるペルオキシソームと葉緑体間の接着力測定を試みることにより、接着力発生のメカニズムを探る。
すべて 2014 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (19件) (うち査読あり 18件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
J. Cell Sci.
巻: 127 ページ: 1161-1168
10.1242/jcs.139709
Plant Cell Physiol.
巻: 55 ページ: e1
10.1093/pcp/pct140
巻: 55 ページ: 482-496
10.1093/pcp/pcu017
Plant J.
巻: 73 ページ: 250-261
10.1111/tpj.12028
Plant Physiol.
巻: 161 ページ: 108-120
10.1104/pp.112.207654
J. Biol. Chem.
巻: 288 ページ: 6014-6023
10.1074/jbc.M112.438143
巻: 54 ページ: 1431-1440
10.1093/pcp/pct091
Plant Cell
巻: 25 ページ: 1355-1367
10.1105/tpc.113.110072
PLoS Genetics
巻: 9 ページ: e1003655
10.1371/journal.pgen.1003655
Curr. Biol.
巻: 23 ページ: 1776-81
10.1016/j.cub.2013.07.035
Plant Physiol. Biochem.
巻: 13 ページ: S0981-9428
10.1016/j.plaphy.2013.11.023
巻: 25 ページ: 4658-4675
10.1105/tpc.113.118158
巻: 76 ページ: 781-791
10.1111/tpj.12347
巻: 25 ページ: 4967-4983
10.1105/tpc.113.116947
Planta
巻: 236 ページ: 999-1012
10.1007/s00425-012-1655-5
巻: 53 ページ: 1310-1321
10.1093/pcp/pcs078
Plant Signal Behav.
巻: 7 ページ: 705-707
10.4161/psb.20346
PLoS One
巻: 7 ページ: e43189
10.1371/journal.pone.0043189
PLos One
巻: 7 ページ: e49103
10.1371/journal.pone.0049103