浮遊動物細胞の細胞中で働いている遺伝子(mRNA)を、1細胞レベルで精密・高効率に定量分析する技術(単一細胞発現定量解析技術)を開発済みである。これは、磁気ビーズ上にcDNAライブラリーを作製し、これを繰り返し用いることにより複数の遺伝子の発現量を精密に定量分析する技術であり、細胞中のmRNAを85%以上の効率でcDNAライブラリーとして取得して分析に使用できる特徴を持つ。本年度は、本技術を植物組織解析に応用した。まず、多数の細胞を効率よく解析するため、定量解析のカギとなる洗浄工程の自動化技術を開発した。試作装置は、複数の単一細胞から得たcDNAライブラリーをそれぞれタイタープレートのウェルに入れて定量PCR解析を繰り返し行う際に、測定の後に必要となる洗浄プロセスを個別に手動で行うのでなく、一括して行うことが可能である。同装置は、洗浄液の注入(10秒)及び排出(20~30秒)を一括で実施するため、96ウェル全体を手作業で洗浄する場合に比べて約1/10以下の操作時間短縮と、必要な洗浄度確保を可能とした。これにより実験者の技量によらず高精度な実験が可能となった。また、本技術を植物細胞解析へ応用する際に、液胞など植物組織特有の成分の影響を評価した。破砕したシロイヌナズナより緩衝液で抽出した植物細胞成分抽出液を準備し、cDNAライブラリー作製過程に同抽出液がどのように影響するかの評価実験プロトコルを確立した。その結果、植物組織5μg以上の成分抽出液の混入により、cDNAクローンの損失などの影響があることが判明した。
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