研究概要 |
植物組織を対象とした、1細胞レベルの複数遺伝子定量発現解析技術を開発している。植物組織の遺伝子発現解析では、以下の課題が存在する。 (1)植物組織は細胞が細胞壁に囲まれており、細胞質の抽出のためには細胞壁を破壊する必要がある。 (2)植物細胞は、細胞内に核酸分解酵素を多く含んだ液胞が存在し、小さな刺激でも細胞内で浸潤することがあり、細胞質内の遺伝子分解が起こりやすい。 そこで、本年度は、以下の技術開発を行った。 1.微小切片の高速採取法及びcDNAライブラリー作製法を開発した。微小切片の高速採取法は、内径0.13mmのニードルを加工した採取手段を用いる。シロイヌナズナの子葉を用いた実験では、直径約150μm、質量約2μgの細胞切片を、採取から凍結まで1分以内に完了できることを確認した。また、採取した微小切片をPCRチューブ(200μl)に移した後、チューブ内で細胞破砕,mRNA抽出,及び逆転写反応を実施し、磁性ビーズ上にcDNAライブラリーを作製する。これらの手法について、特許出願を行った。 2.昨年度開発した洗浄装置について、洗浄廃液からの汚染回避および不具合発生時のメンテナンス性向上のため、洗浄液流路(細管)の高さ調整機能と廃液逆流防止対策を新たに開発した。その知見については、特許出願を行った。 3.長谷班と連携し、シロイヌナズナの光応答遺伝子の部位特異的解析技術を検討した。具体的には、6種の光応答関連遺伝子(TAA1(AT1G70560), PIF4(AT2G43010), ATHB2(AT4Gl6780), HFR1(AT1GO2340), IAA19(AT3G15540), GH3.3(AT2G23170))の定量PCR解析用プローブを設計した。さらに、この6種の光応答関連遺伝子と、コントロールのTUB2(AT5G62690)の計7種について、繰り返し定量PCR解析が可能な解析手順を定めた。
|