植物組織を対象とした、1細胞レベルの複数遺伝子定量発現解析技術を開発している。植物組織の遺伝子発現解析では、以下の課題が存在する。(1)植物組織は細胞が細胞壁に囲まれており、細胞質の抽出のためには細胞壁を破壊する必要がある。(2)植物細胞は、細胞内に核酸分解酵素を多く含んだ液胞が存在し、小さな刺激でも細胞内で浸潤することがあり、細胞質内の遺伝子分解が起こりやすい。本年度は、以下の技術開発を行った。 微小切片採取自動化システムの改良:(1)採取ニードルのシリンジ構造を改造し、微小切片の採取から回収までの所要時間を10秒以内に高速化した。(2)採取動作の改良により、採取ミス発生率を撲滅すると共に、採取位置精度を誤差:10μm以内に向上した。(3)採取後の洗浄行程を最適化し、採取時のコンタミ(キャリーオーバー)を、0.1%未満に低減した。 応用研究(1)シロイヌナズナの若芽(4日齢)の茎頂部分について、茎頂分裂細胞組織(SAM)とその周辺部分を、50μm刻みで採取位置を選定し、微小切片の採取と網羅的遺伝子発現解析を実施した。その結果、SAMの中心やその周辺における部位特異的遺伝子の発現分布を、詳細に解析することができた。技術の詳細と成果について、学術論文に投稿中である。(2)開発した切片採取および網羅的発現解析技術を用いて、茎頂分裂細胞組織部分を選択的に採取。同組織の避陰応答について、網羅的遺伝子発現解析を実施。結果を、学術論文に投稿した。(長谷班主著)(3)開発した切片採取技術とcDNAライブラリー合成技術を用いて、セントポーリアの柵状組織を選択的に採取して発現解析を実施。傷害誘導メカニズムを検討。結果を、学術論文に投稿した。(三村班主著)
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