本研究において開発を行う質量顕微鏡のベースになる顕微MALDI-FTMS装置は12T超電導磁石に組み込まれていたが、このマグネットが使えなくなったため、これを隣の9.4T超電導磁石の裏側に移動し、既存の9.4T-FTMSと切り替えて使用できるようにセットアップした。 顕微MALDI-FTMS装置では、装置内部の真空下に置いた薄切試料にビデオ顕微鏡下で小さく絞った紫外レーザー光をピンポイント照射して、生成したイオンを超高分解能・超高精度質量分析することが出来るが、これを質量顕微鏡として動作させるため、薄切試料を水平XY方向に微小精密スキャンする必要があった。本年度、このためのハードウエア及びソフトウエアの改造を行った。試料ステージ位置をクローズドループ制御する「サーボモーターステージ」に改造し、試料の位置をサブミクロンオーダーで精密に制御できるようにした。また、レーザースポットの面積を劇的に縮小化するために原子間力顕微鏡プローブを利用するが、検出感度を大幅に向上させるためにプローブ制御システムを電気的に他の部位と電気絶縁し、プローブ表面の電位を高電圧にフロートさせるための装置改造を実施した。 この他、植物組織を凍結下でサブミクロンの厚みに薄切するための凍結ミクロトームシステムを導入し、質量顕微鏡測定に適した試料調整法に関する研究を開始した。以上のとおり、本年度は、質量顕微鏡装置実現に向けてのハードウエア・ソフトウエア開発及び凍結ミクロトームによる薄切試料作製及びマトリクス噴霧条件の詳細な検討を行う環境整備を実施した。
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