研究領域 | 植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで |
研究課題/領域番号 |
22120009
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高橋 勝利 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (00271792)
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キーワード | Imaging MS / MALDI-MS / 組織切片 / 紫外パルスレーザー |
研究概要 |
シロイロナズナの葉をテスト試料として、質量顕微鏡観察のための試料調製法を確立した。植物組織には細胞壁があり、細胞壁を取り除かないと細胞内部の物質にアクセスが出来ない。しかし常温下で細胞壁を取り除くと膨圧によって細胞が破裂してしまう。このため植物組織を急速凍結固定して極低温下で薄切し、細胞壁を取り除き細胞内部を露出させた状態で乾燥試料を作成する必要がある。本年度はこのための手法、つまり(1)急速凍結法、(2)極低温薄切法、(3)氷温凍結乾燥法に関して検討を行い、シロイロナズナの葉の40ミクロン厚の乾燥切片を作成することに成功した。この乾燥切片にネガティブモードで有機酸を検出することが出来ることが報告されているマトリクス物質を吹きかけて乾燥させたのちに質量顕微鏡測定を行うが、マトリクス塗布法に関しても蒸着法、スプレー法を様々な条件で適用し評価を行った。 質量顕微鏡装置に関して、試料ステージを微小精密制御するための改造及び制御ソフトウエアの開発を行い、11mm×11mmのITO導電性コートを施したスライドガラス状に張り付けた植物組織切片の光学画像上で質量顕微鏡観察を行う領域を指定し、自動的にスキャンして質量分析を行うための制御ソフトウエアを開発した。これにより、より簡便な操作で質量顕微鏡測定を行うための環境整備に成功した。 全固体紫外線パルスレーザー(波長355nm)を光ファイバーに入射し、反対端から出射されるパルス光を大口径カセグレン鏡に入射し、ファイバーコア径の約4分の1のスポット径にレーザー光を集光できる光学系を用いているが、よりコア径の小さい特殊な光ファイバーを用いることで、レーザー集光スポット径を格段に小さくすることに成功し、高精密化した試料ステージと組み合わせることで、10~20ミクロンの空間分解能で質量顕微鏡測定を行う事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定していた質量顕微鏡装置の高精度化及び植物組織切片調製法の確立を順調に進め、研究の目的である、植物組織・細胞を対象にした高次代謝物を含む化合物の空間分布の測定を行うための環境を計画通りに整備することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、検出された質量ピークに対応する高次代謝物を含む物質の同定法を適用することにより、研究の最終目的である、組織・細胞内での分子動態解析技術を開発する方策である。このためには、測定装置や試料調製法だけではなく、質量スペクトル情報と化合物データベースとの有機的な連携を高度に進めることが必要不可欠である。今後、このための情報環境整備や情報系研究者との密な連携が必要であり、そのようなテーマの公募研究者をグループに入れることにより、研究を加速する必要性がある。
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