○質量顕微鏡装置の改良による測定スループットの大幅な向上を行った。 平成25年度までに開発を行った質量顕微鏡装置のイオン源部分を改造し、従来は真空中に一枚しか入れることのできなかった植物サンプルを貼り付けた導電性ガラススライド(11mmx11mmx0.7mm)を、一度に8枚まで入れることができるようにした。これによりサンプルの入れ替えのたびにイオン源の真空を落とし、再度真空を立ち上げることなく、8枚のサンプルを切り替えながら質量顕微鏡測定を行うことができるようになった。これに伴い、質量顕微鏡の制御用ソフトウエアの改良も実施した。 8枚のサンプルはアルミで作成した円盤状のプレートの円周部分に装着され、プレートを、エンコーダー付きの超音波モーターで正確に回転させたのち、サンプルステージを測定位置まで挿入し、質量顕微鏡測定を実施する。測定終了後、サンプルステージを抜き、プレートを正確に回転させて次のサンプルに切り替えた後、再度サンプルステージを測定位置まで挿入して質量顕微鏡測定を行う。超音波モーターはグランド電位で動作するが、円盤状プレートに装着した導電性ガラスの表面には約300ボルトの静電圧を印加しなければならず、超音波モーターと円盤状プレートの間を完全に絶縁したうえで円盤状プレートの静電圧を印加する方式を開発した。 この装置改造により、これまでサンプル交換時にかかっていた真空たち下げおよび真空立ち上げの時間(約数時間)を短縮することにより、多くの共同研究者が持ち込む測定サンプルの測定スループットを大幅に向上させることに成功した。これにより、他研究班との有機的な共同研究を促進し、植物生理学分野で有用な様々な研究を実施した。
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