高強度のフェムト秒レーザーを顕微鏡で集光した時、集光点で多光子吸収が引き起こされ、さらには切断現象や爆発現象が引き起こされる。本研究では、この局所的な切断現象や爆発現象を駆使し、生きた植物組織のレーザーマイクロダイセクションを実現し、さらには単一レベルの植物細胞の機能制御を目指している。 本課題の属する新学術領域研究「植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで」(総括:長谷あきら)での共同研究が予想以上に進展し、レーザーシステムの仕様を拡張し、細胞・組織切片の切り出し及び光受容体の局所活性化に加え、植物細胞への遺伝子導入技術の確立が必要となり計画に遅延が生じた。本研究により、植物細胞への遺伝子導入技術を検討し、その問題点を明らかにし、レーザーシステムの適正な改良を行うことができた。さらに、フェムト秒レーザーを導入できる倒立型顕微鏡上で、液体窒素により瞬間凍結した植物試料を凍結状態で保持し、フェムト秒レーザーにより非熱的な加工が施せる試料ホルダーを開発することに成功した。その結果、平成23年度研究費報告書に記載したような1)細胞壁を傷つけることなく細胞内外の水溶液の流動制御、2)植物試料を凍結した状態でのレーザーマイクロダイセクション、などの研究に繋げることができた。これらのレーザーシステムの整備により共同研究や学会発表を促進することができ、平成23年度計画の研究を効率よく推進することができた。
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