研究概要 |
1.動物細胞のシグナル検知と伝達制御:低分子量GTPaseであるRacのGEFとして細胞骨格系の制御を通して細胞運動を制御するタンパク質Tiam1については,活性化に必要な新たな膜・膜タンパク質相互作用ドメインであるPHCCExドメインの結晶構造解析を完成すると共にDCC等の認識部位を同定できた.また,運動の方向決定に関与するmyosin-Xについては,積荷認識ドメイン(MyTH4-FERMドメイン)の調製に成功して,構造解析のための結晶化実験に取りかかった.更に,細胞のメカノセンサーとしての・-cateninとvinculinとの張力依存的な特異的相互作用の調節機構を解明するために,種々のコンストラクトを検討して,試料調製を可能とした.これらを用いて,結晶化を試みる段階まで到達した.また,医学的に重要な三量体GTPaseの阻害剤複合体の構造を世界に先駆けて決定した.また,早老症原因タンパク質WRNの構造決定にも成功した. Tiam1については平成22年の年末に,共同研究者から新たな知見(分子内相互作用による活性抑制の可能性)が提供されて,その検討のために必要なドメイン,特にN-末端の構造的に柔軟な領域やRas結合ドメインとPDZドメインを,年度を繰り越して試料調製を貫徹して,分子間・分子内相互作用解析の準備が整った. 2.植物細胞ののシグナル検知と伝達制御:DELLAタンパク質やその他のGRASドメインタンパク質の大腸菌での高い発現系構築に成功した.また,ストリゴラクトン受容体候補であるD14調製して結晶化に成功した.ホルモンと受容体の相互作用解析では,購入した熱量計ITC_<200>をフル稼働で使用して,定量的に結合の強さを見積もった.更に,受容体候補類似タンパク質D14Lの調製については,年度を繰り越して試料の調製を貫徹した.
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