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2012 年度 実績報告書

小胞輸送の制御に関わる分子複合体群のX線結晶構造解析

計画研究

研究領域細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎
研究課題/領域番号 22121003
研究機関東京大学

研究代表者

深井 周也  東京大学, 放射光連携研究機構, 准教授 (10361792)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2015-03-31
キーワード分子認識 / シグナル伝達 / タンパク質複合体 / X線結晶構造解析 / 構造生物学 / 小胞輸送 / 低分子量GTPase
研究実績の概要

小胞輸送によるタンパク質や脂質の適切かつ正確な配置は,細胞の運動や形態変化,極性の形成などの「細胞の形と機能」に関わる多くのプロセスにおいて決定的に重要な役割を果たす.本研究では,「細胞の形と機能」の獲得において重要な役割を担う小胞輸送の制御に関わる分子複合体群のX線結晶構造解析を行い,複雑かつ精密に制御された複合体構築の原理と機能メカニズムの解明を通して小胞輸送制御のメカニズムを原子の精度で明らかにすることを目的とする.今年度は,低分子量GTPase Rabを対応する細胞小器官の膜に固定する役割を担う膜タンパク質GDFについて,高分解能結晶を作製することを目的として,特異的に結合する抗体のFab断片とGDFとの複合体との結晶化を試みたが,結晶を得ることができなかった.また,二重にゲラニルゲラニル化されたRabの調製を試みたが,合成効率の低下により結晶化スクリーニングまでに至らなかった.SNAREタンパク質を小胞体膜に挿入するGET複合体では,GET1の細胞質領域とGET3との複合体の結晶構造と変異体解析の結果から,GET1がGET3二量体の開状態を安定化することを示した.また,GET3とTAタンパク質との複合体の結晶化を試みたが,結晶化の際にTAタンパク質が解離してしまうことが示唆されたため,部位特異的クロスリンクによる複合体安定化の検討を開始した.昨年度,3.4 A分解能で構造決定を行ったM-Sec(膜融合の特異性と高効率性を保証するExocyst複合体のSec6サブユニットのホモログ)は,PIP2との結合とその細胞での役割を明らかにするための機能解析を進め,論文を準備中である.Exocyst複合体全体については,共発現系を構築して発現・精製の検討を行った.さらに,構造未知であるSec10サブユニットの予備的な結晶化に成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

GDFタンパク質の研究では,高分解能結晶の作製を目的として,特異的モノクローナル抗体を複数作成し,そのFab断片との共結晶化のスクリーニングを行った.また,GDFとより強く結合すると考えられる二重にプレニル化したRabの調製を開始した.GET複合体の研究では,GET3サブユニットとGET1受容体の細胞質ドメインとの複合体の結晶構造を決定し,立体構造に基づいて設計した変異体を用いた機能解析の結果とあわせてGET1がGET3二量体の開状態を安定化することを明らかにした.GET3と基質TAタンパク質との複合体の共結晶化は,複合体の解離が問題となっているが,部位特異的クロスリンクによって安定で形の一定な複合体が得られるものと期待している.Exocyst複合体の研究では,Sec6ホモログの構造解析と機能解析を終え,論文として発表する段階に至った.また,これまで結晶化が困難であったSec10サブユニットの予備的な結晶化に成功した.Exocyst複合体全体の共発現系を構築し,発現・精製の検討を開始することができた.

今後の研究の推進方策

GDFタンパク質の研究は,単体の高分解能結晶の作成と脂質修飾Rabとの共結晶化に向けて進展しているので,このまま研究を進める.蛍光ヌクレオチドを用いてGDF活性をリアルタイムでモニターできるようになったので,活性を指標にした結晶化サンプルの再検討を行う.GET複合体の研究は,GET3と基質TAタンパク質との複合体の共結晶化に向けて,部位特異的クロスリンクによって,安定で形の一定な複合体の調製を進める.安定な複合体が得られれば,さらにGET1/2との複合体の調製・結晶化を進める.Exocyst複合体の研究では,複合体全体の発現ベクターを構築したが,発現・精製に関して検討の余地がある.また,サブユニット全体や一部を削ったような複合体を調製し,構造解析により適する性質の複合体を探索する.予備的な結晶が得られているSec10サブユニットについては,結晶の改善をすすめて構造解析へと向かうとともに,他の構造未知のサブユニットについても結晶化を試みる.また,引き続き研究領域内での共同研究も推進していく.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Get1 stabilizes an open dimer conformation of Get3 ATPase by binding two distinct interfaces2012

    • 著者名/発表者名
      Kubota, K., Yamagata, A., Sato, Y., Goto-Ito, S., Fukai, S.
    • 雑誌名

      Journal of Molecular Biology

      巻: 422 ページ: 366-375

    • DOI

      doi: 10.1016/j.jmb.2012.05.045.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular basis of K63-linked polyubiquitination inhibition by the interaction between human deubiquitinating enzyme OTUB1 and ubiquitin-conjugating enzyme UBC132012

    • 著者名/発表者名
      Sato, Y., Yamagata, A., Goto-Ito S., Kubota, K., Miyamoto, R., Nakada, S,, Fukai, S.
    • 雑誌名

      The Journal of Biological Chemistry

      巻: 287 ページ: 25860-25868

    • DOI

      doi: 10.1074/jbc.M112.364752.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ポリユビキチン鎖選択的結合による細胞機能制御2012

    • 著者名/発表者名
      佐藤裕介,深井周也
    • 雑誌名

      生化学

      巻: 84 ページ: 776-779

    • 査読あり
  • [学会発表] Get3による翻訳後膜埋め込み機構の構造学的基盤2012

    • 著者名/発表者名
      山形敦史,窪田恵子,後藤(伊藤)桜子,佐藤裕介,深井周也
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡国際会議場
    • 年月日
      2012-12-11 – 2012-12-14
    • 招待講演

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公開日: 2018-02-02  

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