1. 細胞・核内シグナル複合体の動態解析は、その機能を理解する上で不可欠である。本研究では、不安定なタンパク質複合体精製サンプルを透過電子顕微鏡(TEM)撮影し、画像から情報学的に複数の3次元再構成を行なう単粒子解析を行なう。神経や筋肉において興奮を引き起こすのはイオンチャネルシグナリング複合体である。単粒子解析の画像解析プログラムの精度を向上させ、完全会合体の割合が低い不安定なチャネル複合体でも、解析できる方法を開発した。この方法を用いて、実際に安定性が低い複合体を解析した。Mg23と呼ばれるチャンネル複合体は、3回膜貫通ペプチドが6個集まって安定なサブ複合体構造を形成する。さらに、サブ複合体は6単位づつ会合して、不安定な36サブユニットからなるフル複合体を形成する。サブ、フル両複合体の3次元構造をそれらが混在するサンプルを電顕撮影して決定した(Biochemistry in press)。 2. (1) シグナル制御を行う複合体の多くは、動的に離合集散を繰り返し、細胞内での配置を換えながら機能する。これらの局在を観察するために、大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)を用いた水中免疫電顕法の開発に成功した。本顕微鏡は、細胞を固定・ラベルするだけで、液中での局在を高分解能で決定できる。今までの電顕の様に真空中にサンプルを置く必要がない。本方法を用いて、離合集散を繰り返す複合体である細胞骨格のチューブリン・Actinと、イオンチャンネル複合体におけるCa濃度センサーStimlの水中免疫電顕に成功した。 (2) また、領域内で連携して、ASEMの高い分解能によりタンパク質の3次元結晶を撮影することに成功した。今後、領域内連携をさらに進めることで、シグナル制御複合体の結晶化条件の探索に応用したい。 連携研究者 独立行政法人産業技術総合研究所 三尾和弘 川田正晃
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