研究概要 |
今年度は、ヒストンシャペロンHIRA,CAF-1の発現系・精製系の確立に力を注いだ。HIRAに関しては、これまでに精製されていた組替えタンパク質を分析した結果、ヒストン結合活性はあるものの溶液中で凝集体を作っているらしいことが明らかになり、このサンプルを用いての結晶化は断念した。溶液内での凝集生成を抑えるために、ヒストンH3-H4複合体やHIRAと相互作用するヒストンシャペロンCIAとを大腸菌で共発現させ、複合体として精製する系を検討した。タグの種類や付与するサイトを検討した結果、最適な条件ではHIRA単独で発現させた場合に比べ、3倍程度の量の粗精製に成功した。今後は、精製されたHIRA複合体の分析を行い結晶化に進む予定である。CAF-1に関しては、p60サブユニットの大腸菌による発現、精製を試みた。その結果、1リッターから数ミリグラムの精製タンパク質を精製できうる系を構築できた。今後は物理化学的、生化学的に分析を行い、CAF-1複合体の再構成、結晶化へと進む予定である。転写基本因子TFIID複合体に関しては、80L培養から約70%の純度で17μg程度の複合体を精製できる系を確立した。電子顕微鏡を用いて負染色像を撮影し、予想される大きさの粒子が観察できることを確認している。また、TFIIDのサブユニットであるTAF6の大量発現、精製系を確立し、現在結晶化条件の検討を行っている。ヒストンシャペロンTAF-IβとヒストンH3-H4との複合体との結晶化に成功し、4.8Åの予備的回折データを得ることに成功した。現在、結晶の質を改善すべく、発現、精製系の最適化を行っている。
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