研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
22121005
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
千田 俊哉 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディシナル情報研究センター, 主任研究員 (30272868)
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キーワード | ヌクレオソーム / ヒストンシャペロン / ヒストン / X線結晶構造解析 / 結晶化 / 昆虫細胞 |
研究概要 |
今年度は、HIRAの発規に力を注いだ。大腸菌で発現させたHIRAは、生化学的にはヒストンH3-H4結合活性やCIA/ASF1結合活性を持つものであったが、ゲル濾過による分析の結果、溶液中で大きな会合体を形成していることが明らかになった。その原因をさらに追求するために、電子顕微鏡を用いて不染色像を観察したところ、DNAを巻き込んだ複合体を形成していることが明らかになり、単独での精製を断念した。そこで、HIRAをN末端部、C末端部の2つに分割し、発現精製を行った。そのうちC末端部分に関しては、溶液中で大きな複合体を形成すること無く、精製することに成功した。また、CDスペクトルによる分析からも精製したサンプルが構造を取っていることを確認できた。現在、結晶化を行っている。TFIIDのサブユニットであるTAF6のドメインに関しては精製に成功し、現在結晶を得ている。しかし、分解能が十分出ないため、現在コンストラクトの最適化や精製度の向上、相互作用因子との共結晶化をめざし、実験を進めている。TAF7のドメインに関しても、精製に成功し、結晶化に取りかかっている。TFIID複合体に関しては、TAP-タグによる精製を検討した。粗精製ながら、回収量を大幅にあげることに成功した。電子顕微鏡での観察を現在進めている。CIA/ASF1-H3-H4-Mcm2複合体に関しては、各成分の精製には成功したが、得られた結晶中でMcm2が脱離していることが分かった。これは、塩濃度の影響であることが分かったので、現在塩濃度を下げて再度結晶化に挑戦している。また、TAF-Iβ-ヒストンH3-H4の複合体に関しては、結晶の取得が非常に不安定で、構造解析に耐えうるような結晶が得られていない。ヒストンの末端部分を除いたコンストラクトで結晶化に挑戦していたが、ヒストンが非常に不安定化するという負の側面が明らかになったため、この方針をあらため、テール部分が付いたままでの結晶化に以降することし、現在、結晶化を進めている。また、HIRA、CAF-1ともにきわめて大きな複合体を形成していることが明らかになり、高分子量の複合体を効率良く発現精製するシステムの導入が不可欠になった。そこで、MultiBacシステムを導入し、HIRAおよびCAF-1の全体構造の発現を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、TAF6、TAF7、Mcm2のドメインおよび、テールレスヒストンの発現精製に成功し、単体、およびCIA/ASF1やTAF-Iβとの結晶化を開始することができた。一部のものでは結晶を得ることができている。HIRAに関しても、C末端部分の大量発現、精製に成功し、結晶化に入ることが出来た。HIRAが、細胞内で大きな複合体で機能していることが他のグループにより明らかにされたことは予想外であったが、MultiBacシステムの導入に成功し、複合体として精製、解析を進めて行く準備を整えることができた。TFIID複合体に関してTAPタグの導入により今までより大量に電子顕微鏡用の試料を準備できるようになったことは大きな収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、引き続き複合体の精製、結晶化に力を入れることに変わりはない。multiBacシステムを導入したことで、様々なコンストラクトを試せるようになると考えており、これまでに比べて格段に昆虫細胞を用いた発現、精製の効率をあげられたと考えている。
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