研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
22121007
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前仲 勝実 北海道大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (10322752)
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キーワード | ペア型レセプター / 細胞表面受容体 / 蛋白質 / 蛋白質間相互作用 / 表面プラズモン共鳴 / NMR解析 / X線結晶構造解析 / 免疫制御 |
研究概要 |
生体防御の最前線にあたる細胞表面の受容体とガン細胞や病原体などの非自己抗原との相互認識を構造生物学的に原子レベルで可視化することは医学的に重要な免疫応答や感染経路の作用機序を理解するために必須である。そこで本研究では、アレルギー等の発症に重要な免疫応答シグナル制御複合体を主な対象とし、複雑な構成となる複合体が活性・抑制の相反するシグナルを巧妙に調整する分子基盤を明らかにする。 本年度は、CD160のリガンドHVEMとの結合実験の結果(論文発表参照)から速度論的には少し遅い部類だが、弱い結合(マイクロモルレベル)であり、安定な複合体形成には工夫が必要であることが想定された。そこで、CD160とHVEMとの複合体の構造解析については、混合比の調整、種の異なるCD160の利用、またメチル化等の化学修飾に寄る結晶化の工夫を進めたが、これまでのところ、結晶は得られていない。今後は遺伝子工学的に一本鎖化することを検討するなど根本的な条件検討を進める必要がありそうである。他方、gp49とインテグリンαvβ3については、gp49の結晶化には成功せず、また、複合体の電子顕微鏡観察でも複合体形成が確認できていない。これを踏まえて、遺伝子工学的な一本鎖化を進めている。新たに対象とした免疫系受容体NMR-P1/CD161については、リガンドLLTとの結合様式を相互作用解析と幅広い変異体解析から、複合体モデル構築まで進めることに成功した(論文発表参照)。今後は、このモデルが正当であるか、結晶構造解析により明らかにする予定である。上記のいずれのケースにおいても、モノクローナル抗体を作成することで、構造解析に有利となるように進めると同時に、抗体医薬に取り組みたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫系受容体であるCD160とCD161については、順調に相互作用解析まで進めることに成功した。gp49もある程度の結合実験に成功している。他方、結晶構造解析については、今のところ、まだ試行錯誤の段階であるものの、結晶化に実際にトライする状況まで進んでいるので、後は丹念かつ細かい条件検討を積み重ねることで、これまでの実績を基づいて、成果をあげると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
結晶化については、上述のように丹念な積み重ねと言える。これには結合様式、物理化学的性質などを正確に理解することが最も近道であり、合理的に対処策を立てることができる。具体的には、結合の強さが弱いことを基本として、具体的な対応策を広く持っているため、この引き出しの多さを生かして個別の取り扱いに生かし、早くに実験を成功させ、免疫系受容体の持つ真の分子認識機構を解明することになるのではと期待している。
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