研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
22121007
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前仲 勝実 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10322752)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | ペア型レセプター / 細胞表面受容体 / 蛋白質 / 蛋白質間相互作用 / 表面プラズモン共鳴 / NMR解析 / X線結晶構造解析 / 免疫制御 |
研究概要 |
生体防御の最前線にあたる細胞表面の受容体とガン細胞や病原体などの非自己抗原との相互認識を構造生物学的に原子レベルで可視化することは医学的に重要な免疫応答や感染経路の作用機序を理解するために必須である。そこで本研究では、アレルギー等の発症に重要な免疫応答シグナル制御複合体を主な対象とし、複雑な構成となる複合体が活性・抑制の相反するシグナルを巧妙に調整する分子基盤を明らかにする。 本年度は、免疫活性化を誘導する糖脂質を認識する免疫系受容体MincleとMCLについて、結晶化に成功した。特にMincleについては、丹念な変異導入による性質改善や巻き戻し法および精製の条件の検討を進めた結果であった。両受容体とも全体の立体構造はC型レクチン様受容体と本質的に同じであった。しかし、糖鎖認識に関わると考えられるCaイオン結合部伊周辺の構造は異なっており、広く開いた形となり、疎水性に富んだ領域を形成していた。糖鎖から続くは見られなかった。さらにMincleに対する侵入阻害剤開発については、インシリコスクリーニングを進め、東京大学創薬センターの化合物ライブラリーを利用して、500化合物について結合解析を行った。 免疫制御受容体CD160については、結晶構造解析に困難が伴ったため、NMRを用いた解析に変更した。15Nおよび13Cラベル化したCD160を大量調製し、NMR測定を行った結果、良好なスペクトルが得られた。これから主鎖の帰属を進め、相互作用解析に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MincleおよびMCLの結晶構造解析に成功したことはかなり重要な進展と言える。これにより糖脂質の結合による免疫制御の分子機構に迫るものであり、人工的なアジュバントの設計に向けたメカニズムに迫ることができた。他方、CD160については、結晶構造解析を一旦保留して、ダブルラベル体を作成することに成功した。測定条件を工夫することにより、良好なNMRスペプトル(HSQC)を得ることができた。一部帰属にも成功している。CD161/NKR-P1については、丹念な変異体作成を進めており、サンプルの性状が少しずつ良いものが取れてきている。
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今後の研究の推進方策 |
CD160については、安定な変異体を作製し、これについてのダブルラベル体の3次元NMR測定を行い、出来うる限りの主鎖帰属を進める。これに、リガンドであるHVEMを加えて、滴定することにより、NMRのシグナルの変化から、HVEM結合部位を同定する。また、同時に、結合化合物あるいは結合抗体を作製して、CD160-HVEMシグナルの制御に向けた結合実験(NMR解析、表面プラズモン共鳴相互作用解析)や受容体結合阻害実験を行う。 CD161/NKR-P1については、変異体作成をさらに進め、構造解析に耐えうる安定な分子を作製する。これが得られれば、リガンドLLT1との複合体の構造解析を進める。
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