研究概要 |
平成24年度に確立したFGFR1の発現方法を平成25年度においてさらに発展させ、cMet, Mer受容体型チロシンキナーゼ、Src, Abl等の非受容体型チロシンキナーゼに適用し、大腸菌による大量発現調製法を確立した。これまではチロシンキナーゼ活性を保持した標品はバキュロウィルスによる発現系のみで可能であったが、今回の調製方法により大腸菌を用いても活性の高いチロシンキナーゼを大量に調製できることを確認した。今回得られた発現方法はチロシンキナーゼ研究のブレークスルーと考えられる。 チロシンキナーゼは二量体を形成するが、それぞれのチロシンキナーゼが基質、酵素の関係で互いにリン酸化を行なう。興味深いことに、複数の部位に存在するチロシンが逐次リン酸化されることによりチロシンリン酸化活性は1,000倍以上に昂進することが知られている。本研究では最初のリン酸化過程である活性化ループのチロシンリン酸化の機構を明らかにすることを目的とした。まず、FGFR1の15N均一ラベル体を作成しNMRスペクトルを解析した結果、活性化ループをたがいに活性中心に提示した二量体構造が形成される可能性が示された。そこで、架橋が可能と思われるCys 変異体を10種類作成し架橋実験を行った結果、A488C, K523C, E707C変異体がホモで二量体形成を行うこと、さらにA488C-K523C、R675C-E707Cの二量体を形成することがわかった。これらの結果を考慮してドッキング計算を行った結果、パラレルな配向をとった二量体構造をとることが確認できた。この二量体構造に基づき、界面に存在する塩基性残基にたいし、変異実験を行った結果、顕著にキナーゼ活性を失う変異体を見いだした。以上の結果を考慮に入れることにより、FGDR1の二量体構造の精密化を行うとともに、キナーゼ活性との関連を明らかにできた。
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