計画研究
平成25年度までに明らかにしてきたように、Cblのようなシグナル伝達分子は大きな構造変化を誘起することによりシグナル伝達を制御する。しかし従来のNOEをベースとした近距離情報に基づくNMRの手法では大きな構造変化を検知するのは困難である。そこで、平成26年度は大きな構造変化を検知するのに有効な常磁性ランタニドプローブ法をペプチドグりカン合成酵素群のひとつであるMurD(ATP+Mg存在下でUMAlaよりUMAla-Gluの合成を行う。)に適用し、基質結合に伴うドメイン構造の大きな変化を検知する方法を検討した。常磁性ランタニドイオンをタグを介してタンパク質に結合することにより金属タンパク質でなくても常磁性ランタニドプローブ法の対象とすることができる。MurDは基質結合に伴いドメイン1-2に対しドメイン3が大きく相対配置を変える。相対配置の変化に鋭敏なドメイン2に常磁性ランタニドタグを二つのS-S結合を介して固定し、偽コンタクトシフトに基づくドメイン3のシグナルの変化を測定した。偽コンタクトシフトはランタニドイオンと測定核との間の距離と角度情報を与えるため定量的な構造情報を与える。ドメイン3由来のシグナル10個を帰属し、基質結合に伴う構造変化を解析した。基質が存在しないときはドメイン3は開構造をとるがATP+Mg, ADP+Mgではセミ閉構造、ADP+Mg+UMAおよび阻害剤存在下では閉構造をとることが明らかとなった。セミ閉構造は結晶構造では同定されておらず、今回NMR解析により初めて見出された状態である。このように常磁性ランタニドプローブ法は定量的な構造情報を与える点でユニークな手法である。今後シグナル伝達分子のように大きな構造変化を誘起する分子の解析や過渡的複合体形成の解析に有効な手法となることが期待される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nat Struct Mol Biol
巻: 21 ページ: 513-21
10.1038/nsmb.2822