研究領域 | 血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構 |
研究課題/領域番号 |
22122002
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
久保田 義顕 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (50348687)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 循環器・高血圧 / 発生・分化 / 神経科学 |
研究概要 |
本研究は中枢神経系における血管―神経クロストークの全容を明らかにする目的で、血管、神経両者の可視化に非常に優れるマウス新生仔網膜をモデルとして、研究は遂行された。VEGFR2は、生体におけるあらゆる血管新生において必須の分子である血管内皮成長因子Vascular encothelial growth factor(VEGF)のメイン受容体である。本年度は昨年度に引き続き、網膜における神経―血管相互作用の鍵となる分子として、VEGFR2の網膜神経における発現・機能について解析を行った。VEGFR2の新規レポーターマウスである、VEGFR2-BAC-EGFP(Ishitobi et al Exp Anim 2009)の各発生過程における発現を詳細に解析した結果、VEGFR2は出生から生後1週間までという、きわめて限定された期間において、網膜神経、および未分化網膜神経前駆細胞に発現することを確認した。遺伝学的に網膜神経特異的にVEGFR2を欠損させたマウスにおいて、血管が神経に向かって異所性に伸びていくという特徴的な血管異常を認め、このメカニズムついて更なる解析を進めている。これに関して、VEGFR2は通常の膜型アイソフォーム(mbVEGFR2)に加えて可溶型アイソフォーム(sVEGFR2)が存在することが近年報告されている(Albuquerque et al. Nat Med 2009)。このsVEGFR2がVEGFをトラップし不活化することで神経への血管の接近を妨げているのではないかという仮説のもと、sVEGFR2を特異的に欠損するマウスを作成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度得られた研究成果として、血管内皮細胞特異的分子として知られてきたVEGFR2が生後1週間に限定して、網膜神経、および未分化網膜神経前駆細胞に発現するという知見は、世界的に報告が無く、新規性が高い。また網膜神経特異的VEGFR2ノックアウトマウスの血管走行異常(神経に向かっての異所性血管新生)は非常にユニークな表現型であり、中枢神経における新たな神経―血管クロストークの鍵として特に期待される。しかしながら、網膜におけるこのシステムの全容を理解し、他の臓器における神経―血管クロストークとの関連性を考察する上では、さらなる生化学的・細胞生物学的メカニズムの解析が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、網膜神経特異的VEGFR2ノックアウトマウスの血管走行異常のメカニズムについて、さらに掘り下げて解析をすすめる。特に昨年度作成された可溶型VEGFR2の欠損マウスが同様の血管異常を呈するかどうかについて検討する。さらには、未分化網膜神経前駆細胞における一過性のVEGFR2の発現制御機構についても解析を行う。具体的には新規VEGFR2エンハンサー(Distal-Multipotent-Mesodermal-Enhancer;DMME)の関与をレポーターマウス(Ishitobi et al Development 2011)を用いて解析する。
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