計画研究
本研究は中枢神経系における血管―神経クロストークの実体を明らかにする上で、視覚受容に特化した中枢神経系の一部である網膜をモデルとし、形態学的・分子生物学的にその全容を解明すべく遂行された。生体内のあらゆる血管新生において、血管内皮成長因子Vascular endothelial growth factor(VEGF)のシグナルは必須である。本研究は、このVEGFのメイン受容体である2型VEGF受容体(VEGFR2)が、新生仔期網膜においては血管よりむしろ神経に強く発現するという事象を切り口にVEGF/VEGFR2シグナルの神経における発現の意義に焦点を絞り、多面的に解析を行った。遺伝学的に神経においてVEGFR2を欠損させたマウス(Vegfr2Δneuro)では、神経方向に血管が異所性に伸びていくという表現型が得られた。このメカニズムとして、Vegfr2Δneuroでは、神経におけるVEGFR2を介したVEGFの取り込みが起こらないため、神経方向に血管が伸びていくという事象を、複数の遺伝子改変マウスを駆使して突き止めた。VEGFR2は通常の膜型アイソフォーム(mbVEGFR2)に加えて可溶型アイソフォーム(sVEGFR2)が存在することが近年報告されている(Albuquerque et al. Nat Med 2009)。このsVEGFR2がVEGFをトラップし不活化することで神経への血管の接近を妨げているのではないかという、代替となりうる仮説を検証すべく、sVEGFR2を特異的に欠損するマウスを作成することに成功した。しかしながら、このマウスにおいてはVegfr2Δneuroのような異所性の血管新生は見られなかった。これらの結果は、神経は通常、VEGFR2を介して旺盛にVEGFを取り込み・消化しており、血管の進入を排除していることを示している。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell
巻: 159 ページ: 584-596
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25417109
http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/toc/12/2