研究領域 | 血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構 |
研究課題/領域番号 |
22122004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 淑子 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10183857)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 血管 / 末梢神経 / 中枢神経 / BMP / VEGF / 血管可視化 / 遺伝子操作 |
研究実績の概要 |
血管-神経ネットワークの形成・維持に関わる相互依存性について、以下の2点を中心に研究を進めた。これらの研究を進めるにあたり、脊髄やNC細胞への遺伝子エレクトロポレーション法と、蛍光インクの血管内注入法とを組み合わせた解析を行った。 1. 末梢神経における血管-神経ワイヤリング:血管からNC細胞へのシグナルの実体解明と、交感神経節細胞と副腎髄質細胞とが選別されるしくみについて解析した。結果、背側大動脈に由来するBMPシグナルの受容の差異がこれらの選別に関与することがわかった。交感神経節はBMP存在下においても、シグナル伝達が阻害されているらしく、そこではCrossveinlessなどの制御が働くと思われる。 2. 中枢神経における血管-神経ワイヤリング:これまでの研究から、脊髄内血管は、神経前駆細胞層と分化神経層との境界面を走行することを見出している。そこで、さまざまな遺伝子を用いて、この境界面を人工的に変化させたところ、血管は変化した境界面にそって形成された。これらのことから、神経の分化状態が、血管走向を制御している可能性が高くなった。またVEGFが未分化神経層において特異的に発現することが明らかになった。神経性のVEGFが血管形成を促進していると思われるが、ではなぜ分化神経層内に血管が侵入しないかなど、新たな問題もみえてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的は、血管からNC細胞へのシグナル実体を探ることにあった。上述のように、これらのシグナルがBMPによって制御されていること、またその受容機構の差異が交感神経と副腎髄質との分岐に関わっていることがみえてきたなど、一連のNC細胞の形態形成を説明する分子・細胞レベルでの制御機構の一端が解明された。また中枢神経系においては、脊髄特異的な遺伝子操作によって、血管がどのように変化するかというユニークな解析系を立ち上げたことの意義は高い。これらのことは、トリ胚を用いた独創的なアプローチによって初めて可能となったものであり、従来のマウス遺伝学では解析が困難であった問題を新たな視点で解明できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も末梢神経と中枢神経における血管との相互作用機構の解析を継続する。さらに、これまでの研究成果を発展させて、新たな血管-神経相互作用の発見とそのしくみの開拓に挑む。そして血管-神経融合研究で開発された技術を利用して、さらに多組織間ワイヤリングの素過程を明らかにするなど、未来型の研究開発にも挑戦する。
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