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2012 年度 実績報告書

細胞外基質とその受容体による血管ー神経相互作用の制御

計画研究

研究領域血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構
研究課題/領域番号 22122006
研究機関大阪大学

研究代表者

関口 清俊  大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (50187845)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2015-03-31
キーワード細胞外マトリックス / 基底膜 / インテグリン / 血管 / 神経
研究実績の概要

(1)ヒト蛋白質配列情報データベースのin silicoスクリーニングにより絞りこんだ29個のαvインテグリンのリガンド候補分子のほぼすべての組換え蛋白質の発現および精製を完了し、4種類のαvインテグリン(αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8)との結合活性を網羅的に解析した。その結果、中枢神経系の血管新生に関わるαvβ8がTGF-β1と特異的に結合することを見いだした。Scatchardプロットから算出したTGF-β1に対するαvβ8の解離定数は1.5 nMであった。TGF-β1にはαvβ6も結合したが、αvβ6はフィブロネクチンやフィブリリンとも強く結合し、TGF-β1に対する特異性は認められなかった。これらの結果はαvβ8の生理的なリガンドがTGF-β1であり、中枢神経系でのTGF-β1の活性化においてαvβ8が中心的役割を果たしていることを強く示唆している。
(2)神経幹細胞ニッチの可能性がある基底膜様構造“フラクトン”と血管基底膜の関係を明らかにするため、ラミニンアイソフォームのほぼすべてのインテグリン結合活性を一挙に不活化するアミノ酸変異を血管内皮細胞特異的に導入した遺伝子改変マウスを作製した。具体的には、血管内皮細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するTie2-Creマウスとラミニンγ1鎖にアミノ酸置換を導入したfloxマウスを交配し、血管内皮細胞特異的にラミニンを不活化したマウスを作出した。このマウスの脳室下帯のラミニン活性染色をおこなったところ、フラクトンのインテグリン結合活性は当該遺伝子改変マウスにおいても維持されていることが判明した。この結果はフラクトンが血管基底膜の一部であるとする従来のモデルでは説明が難しく、血管内皮細胞以外の細胞がフラクトンの構成成分を産生している可能性を強く示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本課題では、(1)αvβ8インテグリンのリガンドの網羅的検索、および(2)フラクトンの分子実体および生理機能の解明、を2本柱として研究を進めている。(1)については順調に研究が進捗し、TGF-β1がαvβ8の特異的なリガンドであることを明らかにした。中枢神経系の血管形成においてはアストロサイトに発現するαvβ8インテグリンがTGF-β1の活性化因子として関与することが報告されている。インテグリンαvβ8が特異的かつ高親和性にTGF-β1に結合することが解明されたことにより、中枢神経系における血管―神経相互作用におけるαvβ8の役割が明確になったことは大きな進歩である。(2)のアプローチにおいても、血管内皮細胞特異的にラミニンのインテグリン結合活性を不活化した遺伝子改変マウスの作出に成功し、このマウスの解析からフラクトンが血管基底膜とは別の構造である可能性が大きく浮上した。今後、血管内皮細胞以外の細胞でラミニンを不活化したマウスを作製することにより、フラクトンを産生する細胞の実体の解明とその神経幹細胞ニッチとしての役割が明らかになるものと期待される。

今後の研究の推進方策

本課題の2本柱のうち、(1)αvβ8インテグリンの生理的リガンドの網羅的検索は計画通りに研究が進捗しており、今後は論文作成に重点をおいて研究の収束をはかる。(2)のフラクトンの実体解明については、その主要構成成分がα5鎖を含むラミニンであり、血管基底膜の主要構成分子であるα4鎖を含むラミニンではないことが判明している。現在、α5鎖を様々な細胞系譜で欠失させたマウスを作製中であり、これらの遺伝子改変マウスの解析を通じて,フラクトンの真の生理機能が解明されるものと期待される。フラクトンが神経幹細胞のニッチとして機能しているかが近い将来明らかにできるものと予想している。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 4件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Robust formation and maintenance of continuous stratified cortical neuroepithelium by laminin-containing matrix in mouse ES cell culture.2012

    • 著者名/発表者名
      Nasu, M., Takata, N., Danjo, T., Sakaguchi, H,. Kadoshima, T., Futaki, S., Sekiguchi, K., Eiraku, M., and Sasai, Y.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 7 ページ: e53024

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0053024.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Equarin is involved as an FGF signaling modulator in chick lens differentiation.2012

    • 著者名/発表者名
      Song, X., Sato, Y., Felemban, A., Ito, A., Hossain, M., Ochiai, H., Yamamoto, T., Sekiguchi, K. Tanaka, H., and Ohta, K.
    • 雑誌名

      Developmental Biology

      巻: 368 ページ: 109-117

    • DOI

      10.1016/j.ydbio.2012.05.029.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Polydom/SVEP1 is a ligand for integrin α9β1.2012

    • 著者名/発表者名
      Sato-Nishiuchi, R., Nakano, I., Ozawa, A., Sato, Y., Takeichi, M., Kiyozumi, D., Yamazaki, K., Yasunaga, T., Futaki, S. and Sekiguchi, K.
    • 雑誌名

      The Journal of Biological Chemistry

      巻: 287 ページ: 25615-25630

    • DOI

      10.1074/jbc.M112.355016.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Basement membrane assembly of the integrin α8β1 ligand nephronectin requires Fraser syndrome-associated proteins.2012

    • 著者名/発表者名
      Kiyozumi, D., Takeichi, M., Nakano, I., Sato, Y., Fukuda, T., and Sekiguchi, K.
    • 雑誌名

      The Journal of Cell Biology

      巻: 197 ページ: 677-689

    • DOI

      10.1083/jcb.201203065.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Self-formation of optic cups and storable stratified neural retina from human ESCs.2012

    • 著者名/発表者名
      Nakano, T., Ando, S., Takata, N., Kawada, M., Muguruma, K., Sekiguchi, K., Saito, K., Yonemura, S., Eiraku, M., and Sasai, Y.
    • 雑誌名

      Cell Stem Cell

      巻: 10 ページ: 771-785

    • DOI

      10.1016/j.stem.2012.05.009.

    • 査読あり
  • [学会発表] 組換えインテグリンをプローブとしたインテグリンリガンドのin situ検出法の確立と神経幹細胞ニッチ解析への応用2012

    • 著者名/発表者名
      佐藤祐哉、下野知性、谿口征雅、中野伊津子、上村俊人、武市真希子、浄住大慈、佐藤(西内)涼子、関口清俊
    • 学会等名
      第85回日本生化学会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2012-12-15
  • [学会発表] αVβ8インテグリンはTGF-β1を特異的に認識す2012

    • 著者名/発表者名
      小澤明央、今林 司、佐藤祐哉、上村俊人、浄住大慈、高木淳一、関口清俊
    • 学会等名
      第85回日本生化学会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2012-12-15
  • [学会発表] Polydom, a novel extracellular matrix protein involved in lymphatic vessel development.2012

    • 著者名/発表者名
      Morooka, N., Futaki, S., Sato-Nishiuchi, R., Nakano, I., Sekiguchi, K.
    • 学会等名
      The 10th Korea-Japan Joint Symposium on Vascular Biology
    • 発表場所
      Tokushima, Japan
    • 年月日
      2012-12-05
  • [学会発表] Polydom, a novel integrin α9β1 ligand involved in lymphangiogenesis.2012

    • 著者名/発表者名
      Morooka, N., Futaki, S., Sato-Nishiuchi, R., Nakano, I., Sekiguchi, K.
    • 学会等名
      International Symposium on Neuro-Vascular Wiring
    • 発表場所
      Nara, Japan
    • 年月日
      2012-11-13
    • 招待講演
  • [学会発表] Basement membranes and integrins in neurovascular interactions.2012

    • 著者名/発表者名
      Sekiguchi K
    • 学会等名
      The 35th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society
    • 発表場所
      Nagoya, Japan
    • 年月日
      2012-09-21
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞外マトリックスの多様性と幹細胞ニッチ2012

    • 著者名/発表者名
      関口清俊
    • 学会等名
      第11回日本再生医療学会総会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2012-06-13
    • 招待講演
  • [学会発表] Synthetic basement membrane for regenerative medicine.2012

    • 著者名/発表者名
      Sekiguchi K
    • 学会等名
      9th World Biomaterials Congress
    • 発表場所
      Chengdu, China
    • 年月日
      2012-06-05
    • 招待講演
  • [備考] 大阪大学蛋白質研究所細胞外マトリックス研究室

    • URL

      http://www.protein.osaka-u.ac.jp/chemistry/

  • [備考] Mouse Basement Membrane Bodymap

    • URL

      http://www.matrixome.com/bm/

  • [産業財産権] 新規インテグリンα9βリガンドおよびその利用2013

    • 発明者名
      関口清俊、佐藤涼子、江副幸子
    • 権利者名
      関口清俊、佐藤涼子、江副幸子
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2013/057204
    • 出願年月日
      2013-03-14
    • 外国

URL: 

公開日: 2018-02-02  

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