研究領域 | 血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構 |
研究課題/領域番号 |
22122007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬原 淳子 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (60209038)
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キーワード | メタロプロテアーゼ / ADAM / 造血 / 血液循環 / ErbB / Schwann細胞 / 赤芽球 / グリア細胞 |
研究概要 |
発生や再生における細胞間シグナリングや細胞接着は、精緻な時間的・空間的制御を必要とする。我々は、そのような制御における翻訳後制御、特にADAMプロテアーゼファミリーの役割と機能の解明に焦点を絞った研究を行ってきた。本研究では、血管-神経ワイヤリング制御に関与するADAMプロテアーゼを同定し、その作用機序を明らかにする事により、血管系と神経系とのクロストーク機構に迫ることを目的としている。本年度は、ADAM19,ADAM8など注目するADAMのノックアウトマウスの解析を行っている。その結果、ADAM19が冠状動脈形成に関与することがわかってきた。B6/129mixed backgroundでADAM19ノックアウトマウスはその約15%が生後一ヶ月以上生き延びる。これらの生き延びるノックアウトマウスの超音波解析を行った結果、これらのマウスのn=5/6において、冠状動脈のポジショニングに関して明らかな異常を認めた。 ADAM19は主に神経堤細胞で発現する。冠状動脈形成に、ADAM19がどのように関与しているのか、現在検討中である。一方、血管・神経形成の可視化が可能であり、かつADAMの発現や機能を生体内で調べることのできるゼブラフィッシュを用いた解析も行った。そのうち、マウスで血管形成・神経組織形成に関与するADAM10は、ゼブラフィッシュにおいてふたつのアイソフォームがあり、ひとつが血管系、ひとつが神経系で特異的に発現していることがわかった。さらに、血管系で特異的に発現するADAM10アイソフォームに関しては、ゼブラフィッシュにおいても血管形成に関与することを確認した。一方、神経系組織特異的に発現するADAM10の発現阻害では、血管形成に異常は見られなかった。血管系ADAM10アイソフォームの機能阻害を行い神経形成への影響を、神経系ADAM10アイソフォームの機能阻害を行い血管形成への影響を調べることによって、血管形成・神経組織形成のクロストークがあるかどうか、検討する基盤ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した通り、我々はADAM19ノックアウトマウスを解析することにより、主に神経堤細胞で発現するADAM19が冠状動脈のポジショニングに関与することを見いだした。また、ゼブラフィッシュのADAM10ホモログのクローニングと発現を解析し、ゼブラフィッシュは、血管・血球系で特異的に発現するアイソフォームと、神経系で特異的に発現するアイソフォームをもつことを示し、血管形成・神経組織形成のクロストーク研究の基盤を作ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
マウス冠状動脈のポジショニングにおけるADAM19の役割に関しては、神経堤細胞を分子遺伝学的にマーキングし、また神経堤細胞特異的なADAM19発現にコントロールによって、これらの細胞集団のクロストークへの関与を証明したい。また、プロテオーム解析を利用して、その基質を同定したい。ゼブラフィッシュを用いたADAM10の役割の解析に関しては、神経・血管可視化ゼブラフィッシュを用いて、それらの形態形成のクロストークにおけるADAM10の関与を検討したい。
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