研究領域 | 血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構 |
研究課題/領域番号 |
22122008
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
榎本 和生 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80300953)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 感覚ニューロン / ショウジョウバエ / 軸索 / 気管 / 並走構造 / IgGスーパーファミリー |
研究実績の概要 |
脊椎動物の末梢組織においては、血管と神経繊維が並走する構造がよく見られる。この並走構造は、血管の神経支配や、血管から神経への酸素・エネルギー提供に重要であると考えられているが、その生理的意義は不明である。我々は、ショウジョウバエ気管と血管の解析モデルとして、ショウジョウバエ末梢組織における気管-神経並走構造の成立機構について研究を行った。まず、成虫羽原基において救心性神経軸索と遠心性気管が並走構造を構築する事を見いだした。続いて、気管ー神経並走構造における両者の相互作用を担う分子群についてRNAi法による網羅的解析を行った。その結果、IgGスーパーファミリーに属する接着因子FasII(ほ乳類のNCAM)遺伝子を神経特異的に発現抑制すると、軸索と気管の相互作用が優位に抑制されることを見いだした。さらに、ラブイメージング法をもちいて並走構造の構築過程を追跡したところ、発生初期には、気管と軸索は近傍に存在するが緊密な並走構造をとっていないこと、ある発生ステージを境として、軸索と気管の距離が縮まり、最終的に気管ー神経束が形成されることがわかった。現在、FasIIの発現制御に着目して、FasIIがいつどこで気管と軸索に発現していくるのかを検討している。以上の結果から、接着因子FasIIが気管ー神経相互作用に介在すること、気管ー神経束は恒常的な構造物ではなく、何らかの制御機構を介して構築されることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気管ー血管並走構造の介在因子として接着因子FasII/NCAMを新たに同定した事は大きな進歩である。その意味では十分に順調に進展していると言える。その一方で、FasII抗体の作成等が思っていたように進まず、FasIIの発現パターンを十分に解析できなかったことに不満が残る。
|
今後の研究の推進方策 |
気管ー神経におけるFasIIの詳細な分布パターンを理解する為には特異的抗体が必須なので、いくつかの異なる方法で作成を進めている。またCRISPR/Cas9システムをつかって、FasII分子の末端にMycタグを挿入することを試みる。これらの方法で得られるFasIIプローブを用いて発現解析を行う。
|