脊椎動物の末梢組織では、血管網と神経網が隣接した道筋を通ることが良く知られている。このような血管ー神経伴走構造の形成機構についてはほとんど情報がない。私たちは、血管ー神経相互作用を担う分子基盤を理解する為に、ショウジョウバエの気管ー神経相互作用をモデルとして研究を行った。ショウジョウバエ羽成虫原基の感覚ニューロン群は救心性軸索を腹部神経節へと投射するが、私たちが生体イメージングを行ったところ、救心性軸索は気管と並走するようにして伸長することがわかった。遺伝学的に羽成虫原基の気管を特異的に除くと、救心性軸索の伸長が阻害されることから、気管ー神経相互作用が重要であることが示唆された。続いて、気管に発現する接着因子や分泌因子なd約60因子についてRNAiスクリーニングを行い、イムノグロブリンスーパーファミリー接着因子であるNCAM/FasIIが、感覚ニューロン救心性軸索と気管との伴走構造形成に必須であることを見出した。NCAM/FasIIはホモフィリックな相互作用を介して細胞間接着に働くことが示唆されている。GFP融合蛋白質をもちいてNCAM/FasIIの発現パターンを解析したところ、NCAM/FasIIは救心性軸索上と気管上の双方に発現していることから、ホモフィリックな相互作用を介して機能すると考えられた。興味深いことに、感覚ニューロン軸索が気管から離れて、感覚ニューロン軸索束を形成する時期になるときに、軸索上のNCAM/FasII発現が低下することが見出された。従って、NCAM/FasIIを介する相互作用が、気管ー神経伴走構造のダイナミクスを規定することが考えられた。
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