昨年度までの結果から、側脳室下帯に存在する神経ニッチ領域にTsukushiタンパク質が存在することで、Tsukushi KOマウスが示す側脳室の拡張はレスキューされ、細胞増殖や細胞死も野生型と同様になることが明らかになった。これらの結果は、正常な脳の発生には上衣細胞や周皮細胞から産生されるTsukushiタンパク質の存在が必須であることを示唆するものである。 26年度は、Tsukushiタンパク質を神経系または血管系特異的なマウス(Cre-loxP)を用いて欠失させた場合、側脳室の拡張が誘導されるか検討を行った。まず、血管周皮細胞特異的なSM-22-Creマウスを用いた場合には、側脳室の拡張が誘導されたが、血管内皮細胞特異的なTie2-Creマウスを用いた場合では誘導されなかった。次に、神経系で欠失させるCreマウスとしてnestin-Cre(ほぼ全ての神経幹細胞と神経前駆細胞)とSox2-Cre(ほぼ全ての神経幹細胞と神経前駆細胞)を用いたが、本来Tsukushiが発現していない領域であることから、側脳室の拡張は誘導されなかった。 現在、アメリカのHoltzman教授のグループからTsukushiが発現する上衣細胞特異的なFOXJ1-Creマウスを入手済みである。今後、上衣細胞特異的にTsukushi遺伝子を欠失させることにより側脳室の拡張が誘導されるかを検討し、最終的には神経ニッチを取り囲む上衣細胞や周皮細胞に発現するTsukushiが、脳神経幹細胞や前駆細胞の制御を行うことを示す"Surround Support Model"の確立を目指す。
|