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2011 年度 実績報告書

幹細胞多様性形成機構

計画研究

研究領域神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築
研究課題/領域番号 22123002
研究機関京都大学

研究代表者

影山 龍一郎  京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80224369)

キーワード神経幹細胞 / ESET / ヒストンH3K7メチル化酵素 / ニューロン分化 / アストロサイト分化 / エピゲノム / 欠損マウス / マイクロアレー解析
研究概要

神経幹細胞は、初めに盛んに増殖して細胞数を増やすが、やがて非対称分裂を繰り返していろいろな種類のニューロンを産生する。ニューロン産生が終わると、神経幹細胞は最後にアストロサイトに分化する。このように、神経幹細胞は時間とともに性質を変えて多彩な細胞を産生し、脳神経系の多様性形成に大きく貢献するが、この経時的変化を制御する分子機構はよく1わかっていない。発生の進行とともに発現が変化する遺伝子を探索した結果、ピストンH3K7メチル化酵素であるESETを同定した。この因子は、9.5日胚の神経幹細胞に強く発現するが、発生の進行とともに減少し、17.5胚の神経幹細胞にはきわめて少量しか発現していなかった。ESETのプロモーターを解析したところ、Hes1の結合部位が多数あり、Hes1によって発現が徐々に低下することが示唆された。神経発生におけるESETの機能を調べるために、ESET floxマウスとEmx2-creマウスを交配して前脳特異的ESET欠損マウス(ESET cKOマウス)を作製した。マイクロアレー解析から、ESET欠損によって、多くの遺伝子発現に変化が見られた。特に、ニューロンの分化に関わる多くの遺伝子発現が低下しているのに対して、グリア細胞分化に関わる多くの遺伝子発現が増加した。また、本来、脳に発現しない遺伝子群が強く発現していた。神経発生におけるESET欠損の影響を調べたところ、初期に分化するニューロンの形成が強く阻害されていたが、後期に分化するニューロンの形成には大きな影響は見られなかった。しかし、アストロサイトの形成が正常よりも早く起こり、正常よりも増加していた。以上から、ESETは徐々に発現低下することによって、ニューロン形成からアストロサイト形成への移行のタイミングを制御すると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

幹細胞の多様性形成を制御する因子として新たにESETの同定に成功した。ESET欠損マウスの解析から、この因子はニューロン形成からアストロサイト形成への移行のタイミングを制御することがわかった。さらに、プロモーター解析からESETの発現はHes1によって制御されていることが強く示唆された。今後、Hes1による発現制御機構がわかれば、幹細胞多様性形成機構の一端が解明されたことになり、研究は順調に進展している。

今後の研究の推進方策

ESETの発現がどのように制御されているのか、特に、Hes1やNgn2の発現振動との関係を明らかにしていきたい。また、幹細胞多様性形成に重要な役割を担うNotchシグナルのリガンドであるD111の発現動態を明らかにし、異なる細胞を生み出す分子機構の理解に迫りたい。研究計画の変更や問題点等は特に無い。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2011 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Different types of oscillations in Notch and Fgf signaling regulate the spatiotemporal periodicity of somitogenesis2011

    • 著者名/発表者名
      Niwa, Y., Shimojo, H., Isomura, A., Gonz_ez, A., Miyachi, H., Kageyama, R.
    • 雑誌名

      Genes & Dev.

      巻: 25 ページ: 1115-1120

    • DOI

      10.1101/gad.2035311

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Gene expression profiling of neural stem cells and identification of regulators of neural differentiation during cortical development2011

    • 著者名/発表者名
      Ohtsuka, T., Shimojo, H., Matsunaga, H., Watanabe, N., Kometani, K., Minato, N., Kageyama, R.
    • 雑誌名

      Stem Cells

      巻: 29 ページ: 1817-1828

    • DOI

      10.1002/stem.731

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Continuous neurogenesis in the adult forebrain is required for innate olfactory responses

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto, M., Imayoshi, I., Ohtsuka, T., Yamaguchi, M., Mori, K., Kageyama, R.
    • 雑誌名

      Proc.Natl.Acad.Sci.USA

      巻: 108 ページ: 8479-8484

    • DOI

      10.1073/pnas.1018782108

    • 査読あり
  • [学会発表] Spatiotemporal regulation of somitogenesis by the oscillator networks of the segmentation clock2011

    • 著者名/発表者名
      Kageyama R.
    • 学会等名
      Annual Meeting of American Society for Cell Biology
    • 発表場所
      Denver, USA
    • 年月日
      20111203-20111207
  • [学会発表] Functional significance of neurogenesis in the olfactory bulb2011

    • 著者名/発表者名
      Kageyama R.
    • 学会等名
      23rd Biennial Meeting of the International Society for Neurochemistry
    • 発表場所
      Athens, Greece
    • 年月日
      20110828-20110901
  • [備考]

    • URL

      http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/Kageyama/index.html

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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