研究実績の概要 |
本研究では、哺乳類神経幹細胞において、Coup-TFI/II等の転写因子がその下流遺伝子の発現をどのように調節し、時期依存的な神経・グリア細胞分化のスイッチングや神経細胞のサブタイプ形成を制御しているかを解明することを目的として行われている。これまで、Coup-TFI/IIの下流で発現が抑制される遺伝子群を多数同定すし、抗Coup-TFI/II抗体を用いたChIP-Seq解析により発生初期型の神経幹細胞中でCoup-TFI/IIが結合しているゲノム部位も解析し、Coup-TFI/IIの下流標的遺伝子の候補の絞り込みを行った後、マウスES細胞分化系を用いた機能解析、すなわち、発生初期型神経幹細胞および後期型神経幹細胞におけるレンチウイルスベクターを用いた候補遺伝子のノックダウンおよび強制発現を行い、それらの時系列特異的なニューロンおよびグリアへの分化能をin vitroで検定するスクリーニングを行った。その結果、複数のmicroRNA(miRNA)(miR-17, 106b, 124, 153, 219)がCoup-TFI/IIの下流で神経・グリア細胞分化のスイッチングに関与していることを見出した。具体的には、これらの強制発現によって、神経・グリア細胞分化のスイッチングが阻害され、Tough Decoyベクターシステムを用いた機能阻害によって、初期型神経幹細胞におけるグリアの早期分化が起きた。さらに、これらのうちmiR-153は、グリア分化誘導因子の1つであり発生期の中枢神経系におけるグリア分化の時期を制御していると考えられているNFIAの強制発現によって、その発現が抑制された。また、これらmiRNAの機能標的遺伝子の候補も複数同定した。
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