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2013 年度 実績報告書

幹細胞から神経・グリアへの分化機構解明

計画研究

研究領域神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築
研究課題/領域番号 22123004
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

島崎 琢也  慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00324749)

研究期間 (年度) 2010-06-23 – 2015-03-31
キーワード神経幹細胞 / 神経細胞 / グリア / 分化 / 転写因子 / Coup-TFI/II / miRNA
研究概要

本研究では、哺乳類神経幹細胞において、Coup-TFI/II等の転写因子がその下流遺伝子の発現をどのように調節し、時期依存的な神経・グリア細胞分化のスイッチングや神経細胞のサブタイプ形成を制御しているかを解明することを目的として行われている。これまで、Coup-TFI/IIの下流で発現が抑制される遺伝子群を多数同定、機能スクリーニングを行った結果、複数のmicroRNA (miRNA)がCoup-TFI/IIの下流で神経・グリア細胞分化のスイッチングに関与していることを見出した。具体的には、これらの強制発現によって、神経・グリア細胞分化のスイッチングが阻害され、Tough Decoyベクターシステムを用いた機能阻害によって、初期型神経幹細胞におけるグリアの早期分化が起きた。さらに、これらのうち、同じファミリーmiRNAで、共通の標的認識配列を持つmiR-17, 106b に関してはその機能標的遺伝子の1つがp38MAP-Kinaseであることを見出した。すなわち、p38を強制発現させると初期型神経幹細胞におけるグリアの早期分化が起き、特異的阻害剤やshRNAによる遺伝子ノックダウンによる機能阻害によって、高い神経分化能が維持された。そして驚いたことに、グリアへの分化傾向が極度に高まった後期型神経幹細胞にmiR-17を強制発現させると、初期型にように高い神経分化能示し、p38の機能阻害でも同様の表現型が見られた。
尚、神経幹細胞におけるmiR-17/106bの発現は発生初期で高く、発生が進むにしたがって低下していくのに対して、p38のタンパク質レベルはその逆のパターンを示した。これらのことは、Coup-TFI/IIの下流で、miR-17/106b-p38系による制御が神経・グリア細胞分化のスイッチングに主要な役割を果たしていることを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Coup-TFI/IIの下流で、神経幹細胞発生における神経・グリア細胞分化のスイッチングにおいて主要な役割を果たしている制御系として、miR-17/106b-p38系を同定、その他のmiRNAの機能解析に関しても順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

未だCoup-TFI/II の直接の標的かつ幹細胞の時系列特異的分化能制御に関与していると考えられる遺伝子は同定できていないゆえ、その候補遺伝子のマウスES 細胞分化系を用いた機能スクリーニングを引き続き行う。さらに、Coup-TFI/II やNFIA の下流で神経・グリア細胞分化のスイッチングに関与している遺伝子として同定した複数のmiRNA (miR-17, 106b, 124, 153, 219)の標的遺伝子を、バイオインフォマティクスおよびプロテオミクス技術を利用して探索する。そして、それらの3’UTR のレポーターアッセイと、これもマウスES 細胞分化系を用いた機能スクリーニングを行い機能標的としての同定に至る。さらに、それぞれの遺伝子の機能喪失・獲得実験およびそれらの組み合わせ実験をマウス胎仔脳への遺伝子導入により行い、in vivoでの機能を確認する。最終的には、Coup-TFI/II、NFIA 、下流の各miRNA およびそれらの標的遺伝子の機能喪失・獲得実験の遺伝子発現プロファイリングや、マウス胎仔の様々な時期および領域の神経幹細胞の遺伝子発現プロファイリングも合わせてデータベースを作成し、統計学的解析によって総合的遺伝子ネットワークの全容解明やCoup-TFI/II およびNFIAの標的遺伝子の同定に近づける。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The miR-17/106-p38 axis is a key regulator of the neurogenic-to-gliogenic transition in developing neural stem/progenitor cells.2014

    • 著者名/発表者名
      Naka-Kaneda H, Nakamura S, Igarashi M, Aoi H, Kanki H, Tsuyama J, Tsutsumi S, Aburatani H, Shimazaki T, Okano H
    • 雑誌名

      Proc Natl Acad Sci USA

      巻: 111 ページ: 1604-1609

    • DOI

      10.1073/pnas.1315567111

    • 査読あり
  • [雑誌論文] LIM homeobox 8 (Lhx8) is a key regulator of the cholinergic neuronal function via a tropomyosin receptor kinase A (TrkA)-mediated positive feedback loop.2014

    • 著者名/発表者名
      Tomioka T, Shimazaki T, Yamauchi T, Oki T, Ohgoh M, Okano H
    • 雑誌名

      J Biol Chem

      巻: 289 ページ: 1000-1010

    • DOI

      10.1074/jbc.M113.494385

    • 査読あり
  • [備考] 新しい神経幹細胞の制御法によって神経産生能の回復に成功

    • URL

      http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2013/kr7a4300000cyziu.html

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公開日: 2015-05-28  

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