計画研究
(1)マウス胎児中枢神経系におけるReck発現細胞の動態Reck発現リポーターマウス(Reck-CreERT2;mTmG)を用い、脳虚血CCAO誘導前後の違ったタイミングでTamoxifen(TMX)投与を行うことによって、Reck発現細胞の数や局在の変化を調べた。その結果、虚血前にTMX処理をした場合には、虚血2日後にCA2でReck発現細胞が見られ、6日後には海馬全体で見られるという免疫染色の結果が再現された。これは、虚血直後にReckを発現する細胞がCA2に表れ、これが分裂して海馬全体に広がるという従来のモデルと一致する。しかし、虚血後1目目からTMX投与した場合には、上述の場合にくらべ最終的にラベルされる細胞の数が多いことが見出された。この結果は、虚血後2日以降にもReckを発現し始める細胞があることを示唆する。また、これらの結果を通して、静止画像の解析から細胞動態を完全に把握することの困難さが浮き彫りにされた。今回、新たに視床下部と脳下垂体で定常的にReckを発観する細胞を見出した。(2)脳神経系における部位特異的Reck欠損の影響神経前駆細胞特異的Reck欠損マウス(R1/R1;Nesti-Cre)の新生仔の脳切片観察において複数箇所に顕著な形態異常が見出された。(3)脳神経系におけるReck低発現の影響上記2項目で新たな知見が得られたため、低発現マウスにおける脳の解析は進めず、より顕著な表現型である肢芽の形態形成異常についてそのメカニズムを解析した。また、血管内皮細胞選択的Reck欠損マウスが胎生後期に大脳皮質の形態異常を伴って死亡することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
(1)計画した実験は予定通り進んだが、計画で選んだ実験手法に限界があった。(2)R1/R1;Nesti-Creマウス脳切片の精査が効を奏した。この系から大脳皮質の形成機構に関して重要な知見が得られると予測される(3)Reck発現低下マウスの肢芽形成について研究が進んだ。
(1)海馬スライスのタイムラプス記録など、細胞動態のリアルタイム観察を試みる。また、視床下部と脳下垂体におけるReck発現細胞の同定を試みる。(2)結果の再現性確認および異常箇所/細胞の同定を試みる。(3)血管内皮選択的Redkマウスで見られる大脳皮質の異常と(2)の結果を比較することにより大脳皮質構築における血管(発生)の役割について検討を加える。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Oncogene
巻: (in press)
10.1038/onc.2011.570
Biology Open
10.1242/bio.2012638