計画研究
『I.神経細胞分化制御の分子機構』興奮性神経細胞の分化制御とPax6による多様な標的分子発現制御:Pax6の標的分子として同定したDmrta1の機能解明のため、Dmrta1遺伝子変異マウスを用いて神経分化異常を調べたところ、もっとも早く分化が開始されるreelin陽性の第I層ニューロンの数が減少していることが見出された。他のII層からIV層の形成については、各種層特異的マーカーの発現から著名な変化は見いだせなかった。これらは、Dmrta1の類縁の分子であるDmrta2およびDmrt5がオーバーラップして大脳新皮質原基に発現しており、Dmrta1変異マウス大脳新皮質原基においてDmrta1の機能を代償しているためと考えられた。別のPax6標的因子であるnineinが胎生期神幹細胞のinterkinetic nuclear migration(INM)に果たす役割を解明するため、nineinの機能をRNA干渉法を用いて阻害して微小管伸長アッセイを行ったところ、予測通り微小管の伸長の低下が認められた。したがって、胎生期神経幹細胞で発現しているPax6はnineinの発現制御を介してINMを制御することが示唆された。『II.層特異的投射と新皮質領域間連絡の形成機構』:大脳新皮質への入力線維の層特異的な投射に関与する軸索誘導分子Sema6A/Sema6Bとその受容体plexin-A4について、機能部位を特定するため、培養下における投射再構築法による解析に着手した。また、投射期における分子の分布を明らかにするために、これら分子を特異的に認識する抗体を作製した。さらに、分子機能を明らかにするための培養アッセイ系の確立を試みた。
2: おおむね順調に進展している
前年度末に生じた大震災により、貴重なサンプルが失われたり、実験動物施設のオートクレープが稼働しなかったことによりマウスを一部、処分せざるを得なかったために、研究の進捗に遅れが生じたが、年度の後半に新たな研究費の配分を受けることによりキャッチアップできた。
今年度はDmrta1の解析に関して論文投稿を目指している。また、nineinの解析に関してはリバイスの段階に入っており、なんとしても成果を発表したいと考えている。軸索投射関係の研究については、研究分担者の須藤が前年度末に異動したため、いくつかの実験系を新たにセットアップ中であるが、今年度は進展が見込まれる。さらに、領野特異的な分子の探索に関して興味深い結果が得られることが期待される。
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